犬のアトピー性皮膚炎

犬のアトピー性皮膚炎~耳、指の間、わきの下、鼠径部を強く痒がったら~

犬のアトピー性皮膚炎とは、皮膚のバリア機能が低下したり、アレルギーの原因となるアレルゲンが皮膚を通じて体内に入ることによってアレルギー反応により皮膚に症状が起こる皮膚炎です。

皮膚には「皮膚のバリア機能」と呼ばれる、体内の水分が蒸発しないよう内部にとどめておく機能、および外界の異物が体内に侵入しないよう防御する機能があります。
体内からの蒸発予防には、皮膚最上部の角質層内にある「天然保湿成分」や、皮膚内部に埋め込まれている皮脂腺から分泌される「皮脂」が重要な役割を果たします。
前者は水分を抱え込んで動けないようにする機能、後者は体外に出ていこうとする水分を角質層レベルでブロックする機能を有しています。
体外からの異物防御には、皮膚の最も外側を覆っている「角質層」が重要な役割を果たします。
健常な角質細胞の隙間は「角質細胞間脂質」と呼ばれる脂成分で埋められており、細胞同士を強固に結びつけることで外界からの異物侵入をシャットアウトしています。
アトピー性皮膚炎の一因は、何らかの理由で上記バリア機能が損なわれ、皮膚が乾燥したり異物が入り込むことで炎症が生じてしまうことです

ここでは、犬のアトピー性皮膚炎の主な原因はもちろん、症状から対処法、かかりやすい犬種などをまとめていますので、是非ご参考になさって下さい。


  • 犬のアトピー性皮膚炎の主な症状
  • 犬のアトピー性皮膚炎の主な原因 
  • 犬のアトピー性皮膚炎の主な治療法 

犬のアトピー性皮膚炎の主な症状

犬のアトピー性皮膚炎は、般的には6ヶ月から3歳くらいまでの比較的若い時期に発症します。
特徴的な症状は、耳、指の間、わきの下、鼠径部を中心に強い痒みのために、患部をかきむしったり、かんだり、こすったり、なめたりするようになります。

主な症状
☆かゆみ
☆患部の乾燥
☆患部をひっかく・こすりつける・なめる
☆患部のただれや膿皮症
☆慢性的な外耳炎
☆慢性的な結膜炎

犬のアトピー性皮膚炎の主な原因

犬のアトピー性皮膚炎の原因は、皮膚バリア機能の低下、遺伝的な要因、アレルゲンとの接触などがあげられます。
詳しくは、下記の通りです。

  • 皮膚バリア機能の低下
    乾燥肌(ドライスキン)や脂っぽい状態(脂漏)になると、皮膚のバリア機能が適切に働かなくなり、発症しやすくなります。
    2016年2月、ペンシルベニア大学などを中心としたチームは、アトピー性皮膚炎を発症した犬の皮膚では、「ブドウ球菌」(Staphyloccocus)が異常増殖しているという事実を突き止めました。
    また同年4月、日本の理化学研究所は、「JAK1遺伝子」の異常が角質をはがす酵素「プロテアーゼ」に変化をもたらし、角質における保湿効果を低下させてアトピー性皮膚炎を発症させているというメカニズムを報告しました。
    両調査をまとめると、「JAK1遺伝子」の異常が皮膚のバリア機能を低下させ、皮膚細菌叢内における「ブドウ球菌」の異常増殖を招き、結果としてアトピーが発症しているとなります。
    全ての症例において「JAK1遺伝子」の異常が確認されているわけではありませんが、遺伝子レベルでの変異が皮膚のバリア機能を低下させ、アトピーを発症させるというルートがあることは間違いないようです。

  • 環境要因
    気温や湿度、ストレス、発情など、さまざまな環境の要因が症状に関わっていると考えられています。
    2017年、フィンランドで行われた大規模な統計調査により、「衛生仮説」が犬のアトピー発症に関わっている可能性が示されました。
    「衛生仮説」(えいせいかせつ)とは、幼い頃に多少汚れた環境に暮らしていた方が、逆説的にアレルギー疾患にかかりにくくなるという考え方のことです。
    調査では「他の犬と同居している」という条件を満たしている場合、発症リスクが3~4割低下するという関係性が確認されました。
    もし上記「衛生仮説」が機能したのだとすると、同居している犬が外から運んでくる微生物や何らかの微粒子が良い意味での免疫負荷になり、結果としてアトピー性皮膚炎の発症率を下げたのではないかと推測されます。

  • アレルゲンとの接触 
    アレルギー反応を引き起こすアレルゲン(抗原)は、ほこり、ダニ(死骸や排泄物)、花粉、フケ、化学薬品など多様です。また近年は、アレルギーと中毒のちょうど真ん中の症状を引き起こす揮発性有機化合物(VOC)の存在も侮れません。

  • かかりやすい犬種 
    ある特定犬種においては、遺伝的にアトピーにかかりやすいといわれています。
    具体的な犬種は下記の通りです。

    ボストンテリア
    ケアーンテリア
    ダルメシアン
    ブルドッグ
    イングリッシュセター
    アイリッシュセッター
    ラサアプソ
    ミニチュアシュナウザー
    パグ
    シーリハムテリア
    スコティッシュテリア
    ウェストハイランドホワイトテリア
    ゴールデンレトリバーなどです。

    こうした犬種の中には、IgE抗体が多く作られるからではないかと推測されます。

犬のアトピー性皮膚炎の主な治療法 

犬のアトピー性皮膚炎の治療は、いろいろな方法があります。

  • 基礎疾患の治療
    別の疾病がアトピー性皮膚炎を悪化させている場合は、まずそれらの基礎疾患への治療が施されます。
    具体的には膿皮症疥癬ノミ皮膚炎などです。

  • 投薬治療
    炎症を軽減する目的でステロイドや抗ヒスタミン薬などが投与
    されます。
    ただしステロイドは医原性のクッシング症候群、抗ヒスタミン薬は食欲不振、嘔吐、下痢といった副作用を引き起こすことがありますので、決して万能薬というわけではありません。
    また、抗ヒスタミン剤は、ヒスタミンの活性を抑える薬です。
    副作用も少ないですが、あまり大きな効果は望めません。
    近年は犬用の減感作薬も登場しています。
    「減感作」(げんかんさ)とは、毒性を薄めたアレルゲンをわざと体内に入れることによって、慣れを生じさせようとする治療法のことです。
    具体的には、ゼノアックから注射薬「アレルミューンHDM®」などが発売されています。
    ただしこれは犬専用で、なおかつアレルゲンはチリダニが保有する「Def 2 / Der p 2」限定です。
    また試験的に、薬剤を経口投与する「舌下免疫療法」の可能性も検討されています。
    「アトピーを発症した犬の皮膚ではブドウ球菌が異常増殖している」という事実から、抗生物質を投与して皮膚の細菌叢を変化させるというアプローチも効果的であると考えられています。

  • 脂肪酸の摂取
    リノール酸、リノレン酸、エイコサペンタエン酸などの脂肪酸を摂取することでアラキドン酸の生成を抑制され、症状が軽減することがあります。

  • 漢方薬
    ステロイドなどの副作用が激しい場合は、時に漢方薬が用いられます。

  • 薬用シャンプー
    薬用シャンプーで
    皮膚や被毛にまとわりついたアレルゲンを物理的に洗い流します。

  • 保湿剤
    皮膚が乾燥してかゆみが悪化するような場合は保湿剤を用いることがあります。
    日本の理化学研究所がマウスを対象として行った調査では、ただ単にワセリンを塗っただけで症状の軽減が見られたとしています。

  • こまめな掃除
    ダニやホコリ、花粉などを極力室内から除去するため、こまめに掃除をします。
    また目に見えないものの体に様々な影響を与える揮発性有機化合物(VOC)を可能な限り環境中から取り除くようにします。
    アレルゲンが何であるかを試行錯誤の末に見つけるという方法もありますが、病院で皮内テストを行うとその時間が短縮されることがあります。
    疾患している犬の胸の外側を剃って皮膚を露出し、そこに様々なアレルゲンを注入します。
    もしその中にアレルゲンが含まれていると、皮膚が他の部位よりも大きく盛り上がるという理屈です。
    その他の方法としては、血液検査によってIgE抗体を調べるというものもあります。
    検査は民間の機関で行われますので、詳しくはかかりつけの獣医さんにご相談ください。

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