犬の中耳炎~愛犬が耳を触られるのを嫌がったり、耳を痛がったら~
犬の中耳炎(ちゅうじえん)とは、耳は外側から外耳、中耳、内耳と連なり、中耳(ちゅうじ)と呼ばれる部位に炎症が発生した状態のことです。
中耳は聴覚と耳の環境維持に関係した器官です。
外からの音を受け取って神経に伝える「鼓膜」、その後ろにある「鼓室」(こしつ)、鼓室の中で音を増幅する「耳小骨」(じしょうこつ)、そして鼓室と咽頭とを結んで気圧調整を行う「耳管」(じかん)が含まれます。
中耳は顔の筋肉をつかさどる「顔面神経」や、眼球領域の調整をつかさどる「自律神経」に隣接しているため、ここに炎症が発生するとこうした周辺神経にも影響が波及し、様々な症状が出ます。
ここでは、犬の中耳炎の主な原因はもちろん、症状から対処法などをまとめていますので、是非ご参考になさって下さい。
- 犬の中耳炎の主な症状
- 犬の中耳炎の主な原因
- 犬の中耳炎の主な治療法
犬の中耳炎の主な症状
中耳炎の特徴的な症状として、耳の強い痛みがみられる場合があります。
主な症状 |
☆外耳炎の併発 |
☆耳をしきりに触ろうとする |
☆頭を振る |
☆頭が片方に傾く |
☆片方の耳や唇の麻痺 |
☆ホルネル症候群 |
犬の中耳炎の主な原因
犬の中耳炎の原因は、ほとんどが外耳炎の炎症が広がることで起こります。
他の原因としては、中耳内の腫瘍や、細菌やウイルスの侵入によって、中耳炎を起こすこともあります。
詳しくは、下記にまとめています。
- 外耳炎
すでに外耳炎を患っている場合、炎症が鼓膜を破ってその後ろにある中耳領域に達してしまうことがあります。 - 外からの細菌やウイルス
中耳の鼓室は、耳管によって外界と通じています。
この構造は、外気圧と鼓室内の気圧を均一化するときに役立っていますが、同時に外の細菌やウイルスの進入路にもなってしまいます。
ですから口の中で繁殖した何らかの病原体が、まるで空気ダクトをよじ登るように耳管を伝って鼓室内に侵入し、炎症を引き起こします。 - 腫瘍やポリープ
外耳や耳管といったルートを通してではなく、中耳そのものの中に腫瘍やポリープが発生し、炎症を引き起こすことがあります。 - マズルが短い短頭種
2016年に行われた調査により、パグやフレンチブルドッグなどマズルが短い短頭種では耳管腔内への滲出物が36%という高頻度で見られることが確認されました。
またこの傾向は、軟口蓋が厚い個体ほど強かったとも。こうした事実から、「短頭種」という頭蓋の構造が何らかの形で中耳炎の発症に関わっている可能性が考えられます。
犬の中耳炎の主な治療法
犬の中耳炎の治療としては、外耳炎を併発していることが多いので、外耳炎の治療が行われます。
細菌による中耳炎の場合は、細菌の増殖を抑えるためには抗生剤が処方されます。
- 外耳炎の治療
外耳炎が悪化して中耳炎が発生している場合は、まず外耳炎に対する治療が施されます。
ただし、鼓膜に穴が空いている場合は、薬液による治療が見送られます。 - 細菌やウイルスの駆除
外耳道内に生息しているブドウ球菌を始めとする細菌や真菌が炎症の原因になっている場合は、抗菌薬や抗真菌薬が投与されます。
原因菌を正確に突き止めることが重要です。
また耳管から侵入してきたウイルスが原因の場合は、抗生物質が3~6週間投与されることもあります。 - 鼓膜を切開し洗浄
症状がひどい場合は、鼓膜を人為的に切って中耳を露出し、そこを温めた滅菌生理食塩水で洗浄することがあります。
ただし体に対する負担が大きいため、かなり重症で慢性化しているときに限ります。
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