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犬のてんかん

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 脳内の神経に異常な興奮が起こり、体のコントロールを失ってしまう状態のことです。
 脳内では数十億個の神経細胞が、軸索やシナプスと呼ばれる電気ケーブルで結ばれています。しかし様々な原因で神経細胞が異常発火(てんかん放電)を起こし、まるで花火が暴発したかのように無秩序に興奮が起こることがあります。これが「てんかん発作」です。
 なお2015年、犬や猫のてんかんを研究する国際組織「IVETF」が、獣医学領域におけるてんかん用語の見直しと定義づけを行いました。

てんかんの基本用語 定義
発作(Seizure)  突然生じる短時間の一時的な変調のこと指す広い概念です。必ずしもてんかんを意味しているわけではありません。
てんかん発作(Epileptic seizure)  脳内における同時発生的、かつ多くの場合は自己制御的な神経細胞の過活動の発現のことです。ここで言う「自己制御的」とは、治療しなければ悪化する傾向がある状態の事を意味しています。
反応性発作(Reactive seizure  正常な脳機能から一時的な機能の乱れが生じる際の、自然な反応の結果として起こる発作のことです。原因や混乱が修正され次第、脳の機能は回復します。
てんかん(Epilepsy)  てんかん発作に対する継続的な傾向によって特徴づけられる脳の病気のことです。自然発生的なてんかん発作が24時間以上の間隔をもって最低2回起こることが基準とされます。
 
 
 
※てんかん様発作
てんかんとよく似た症状を示すものの、実は全く別の原因から起こる発作のことです。犬や猫がてんかんなのかどうかを診断する際は、まず基本的な診察と検査によって「てんかん様発作」の可能性を除外しておく必要があります。また診断の精度を高めるため、動物病院では飼い主に対して様々な質問が出されます。
 

てんかんと間違えやすい発作  
反応性発作

体内の代謝異常が原因となって起こる発作のことです。繰り返し発生するものではなく、原因さえ取り除けば症状は消失します。具体的には低血糖症、低酸素症、低カルシウム血症、高カルシウム血症、低マグネシウム血症などの血液異常、腎臓疾患肝臓疾患といったの内臓異常、毒物有毒植物の摂取による急性中毒などです。

ナルコレプシー(narcolepsy)

慢性の睡眠疾患のことです。犬や猫は眠いわけではないのに、突然突っ伏したり横に倒れたりします。継続時間は数秒~30分で、外界からの刺激で元に戻ることが多いようです。てんかんが激しいけいれんと硬直を特徴としているのに対し、ナルコレプシーは全身の脱力(カタプレキシー, cataplexy)を特徴としています。原因としては遺伝(ドーベルマンとラブラドールレトリバー)、自己免疫疾患、神経系の不具合(ヒポクレチン異常)などが考えられますが、よくは分かっていません。食餌や遊びなど、発症の引き金となるものが明確な場合は、それを生活環境の中から排除します。そして転倒しても大けがをしないよう、常に安全な場所を確保し、動物をよく観察するよう心がけます。

シェイカー症候群(shaker syndrome)

てんかんのように激しくけいれんすることはないものの、理由もなく体が小刻みに震えてしまうという病気です。原因は不明ですが、おそらく遺伝病の一種だろうと考えられており、被毛が白い小型犬(マルチーズやウェストハイランドホワイトテリア)で多く発症します。多くの場合、コルチコステロイドの投与によって1週間ほどでよくなりますが、まれに長期化することもあります。甲状腺機能亢進症などとの鑑別が必要となりますので、一度獣医さんに相談した方がよいでしょう。

特発性頭部振戦(とくはつせいとうぶしんせん)

頭が垂直方向や水平方向に小刻みに揺れる疾患のことです。意識を失うことはなく、立ったり歩いたりすることができます。好発品種はドーベルマン、ボクサー、ブルドッグ、フレンチブルドッグ、シェットランドシープドッグなどで、多くは2歳未満で発症します。今のところ治療法はありませんが、生命を脅かす病気ではありません。

起立性振戦

犬が立ち上がろうとする時や座ろうとする時、折り曲げた手足が小刻みに震える疾患のことです。歩行障害や痛みを伴うことはありません。好発品種はグレートデン、マスティフ、スコティッシュディアハウンドといった超大型犬で、通常は2歳未満で発症します。症状が進行することもありますが、生命を脅かす病気ではありません。

老齢性振戦

加齢に伴って出現する震えのことです。好発品種はテリア種や日本犬で、立ち上がろうとするときの後足でよく観察されます。原因は不明で治療法もありませんが、生命を脅かす病気ではありません。

強迫神経症

まるで何かに取り憑かれたように無意味と思われる行動を延々と繰り返す病気のことです。一方、てんかんの症状の一つとして「自動症」(automatism)というものがあり、「何もない場所でカチカチを何かを噛む」、「頭が傾く」、「その場でグルグル回る」、「片足を繰り返し挙げる」といった意味不明の行動を繰り返すようになります。両者は非常に似ていますが、てんかんの方が短時間で収まるのに対し、強迫神経症の方は時として1日中繰り返すことがありますので、鑑別する際のヒントになるでしょう。

 

構造性てんかん

 脳の構造的な変質が原因となって発症するてんかんのことです。3つのサブカテゴリがあります。

  • 焦点性てんかん発作(Focal epileptic seizures) 神経細胞の異常発火が脳の局所で発生した状態のことです。
     具体的には、筋肉の変調(顔のけいれん・繰り返し頭を突き出す・リズミカルに瞬きする・リズミカルに四肢を動かす etc)、自律神経系の変調(瞳孔の散大・過剰な流涎・嘔吐 etc)、行動の変調(不安がる・落ち着きをなくす・何かを恐れる・異常に注目を集めようとする・飼い主に追いすがる etc)といった症状として現れます。
  • 全般性てんかん発作(Generalized epileptic seizures) 神経細胞の異常発火が右脳と左脳を含む脳の広い領域で発生した状態のことです。
     具体的には、強直性発作(筋肉が収縮したまま)、間代性発作(筋肉が収縮と弛緩を繰り返す)、強直間代性発作(強直と間代の複合)、ミオクローヌス(体の両側に同時発生する間代性発作)、弛緩発作(突然筋肉が弛緩して動かなくなる)といった症状として現れます。
  • 焦点性発作から全般性発作への発展(Focal epileptic seizures evolving into generalized epileptic seizures) 焦点性てんかん発作から全般性てんかん発作へと進行した状態のことです。神経細胞の異常発火が、まるで山火事が燃え広がるように、局所から脳全体に広がった状態と言えばわかりやすいでしょう。
 

 最も多いのは全般性てんかん発作で、中でも全身の筋肉が突っ張った後、小刻みなけいれんへと移行する「強直間代性発作がよく見られます。

 発作中はけいれん、昏倒、失禁、泡を吹くなどの激しい症状を示しますが、発作が治まるとまるで何事も無かったかのように振舞います。また発作と回復の間に、「無目的に同じ歩調で歩き続ける」(ペーシング)、「やたらに水や食餌を欲しがる」といった「発作後行動」を見せる個体もいますが、24時間以内に消失するのが常です。発作が起こるのは、犬が休んでいたり眠っている夜間や早朝にやや多いとされますが、全ての犬にあてはまるわけではありません。
 なおてんかん発作が30分以上続く場合は「てんかん重積」、24時間で2回以上起こる場合は「群発発作」と呼ばれ、通常のてんかんとは区別されます。中毒や脳の外傷、脳ヘルニアなど、早急な治療を要する可能性がありますので、発作が10分経っても収まらない時は速やかに獣医さんにご相談ください。
 

特発性てんかん

 脳内の器質的な変調が見られず、恐らく遺伝が原因と考えられるてんかんのことです。3つの種類があります。なお「突発性」(とっぱつせい)と間違われることがありますが、「突発性」は症状が突然出現することを意味し、「特発性」(とくはつせい)は症状の原因がわからないことを意味していますので、両者は別物です。

  • 遺伝性がある(genetic epilepsy 変化を引き起こす原因遺伝子が特定されているてんかんのことです。具体的にはロマーニャウォータードッグ(ラゴットロマニョーロ)の良性若年性てんかんに関わっている第3番染色体「LGI2遺伝子」、ベルジアンシェパードの遅発性焦点および全身性てんかんに関わっている第37番染色体「ADAM23遺伝子」などが該当します。
  • 遺伝性が疑われる(suspected genetic epilepsy) 特定犬種、特定の家系において高い頻度で見られるてんかんのことです。
  • 原因不明(epilepsy of unknown cause) 脳に器質的な欠陥がなく、遺伝性も見られず、原因不明のてんかんのことです。
 

 特発性てんかんを診断する際は、「反応性発作」や「構造性てんかん」など、他のてんかん(or てんかん様発作)ではないことを確認する「除外診断」がメインとなります。「IVETF」はその際、3つの階層からなる診断基準を用いることが望ましいと提唱しています。

 
特発性てんかんの診断階層
  • 信頼度I 自然発生的なてんかん発作が24時間以上の間隔をあけて起こる。てんかん発作の初出は生後6ヶ月から6歳の間である。発作間に行われた身体神経学的な検査では異常は見られない。血液検査と尿検査においてミニマムデータセット(基本項目)の異常が見られない。
  • 信頼度II 「信頼度I」の項目に加え、空腹時および食事後の胆汁酸、MRIによる脳の画像、脳脊髄液に異常が見られない。
  • 信頼度III 信頼度I」と「信頼度II」の項目に加え、てんかん発作特有の脳波異常が見られる。

 

犬のてんかんの投薬治療

 定期的に薬を飲ませる投薬治療がメインとなります。薬の目的はてんかんを治療することではなく、あくまでもてんかん発作を抑えることであるため、「抗てんかん薬」という言葉ではなく「抗発作薬」の方が適切であるという見方もあるようです。

投薬の開始時期

 犬や猫の「てんかん」に関する研究と調査を行う「IVETF」は、てんかんに対する薬物療法のスタート時期に関し、以下に示すいずれかの項目を満たした時がタイミングだと提案しています。

  • 6ヶ月間で2回以上てんかん発作を起こした
  • てんかん重積を経験した
  • てんかん発作を起こした後の異常行動(攻撃性の増大・一時的な盲目etc)が深刻だったり、 24時間以上継続する
  • てんかん発作の持続時間がだんだん長くなっていたり、てんかん発作の頻度がだんだん多くなっている

抗てんかん薬(抗発作薬)

 以下は、主にヨーロッパにおいて特発性てんかんに用いられている薬の一覧です。2016年に行われた犬に対する抗てんかん薬の総括的レビューでは、安全性なら「レベチラセタム」、効き目なら「フェノバルビタール」が最も良いとの結果が出ています。

  • フェノバルビタール
  • レベチラセタム
  • イメピトイン(2013~)
  • ブロムカリ
  • ゾニサミド
  • フェルバメート
  • トピラメート
  • ガバペンチン
  • プレガバリン
  • ラコサミド
  • ルフィナマイド

 その薬に効果があったかどうかは、一般的に以下の流れに沿って評価されます。
 まず第一目標となるのが「発作フリー」の状態で、投薬前の発作間隔を「1」としたとき、投薬後の発作間隔が「3」以上に伸びていることが望ましいとされています。このとき「3」の最低期間は3ヶ月です。
 第一目標が難しいと判断された場合、第二目標となるのが「てんかんの部分的な改善」です。これは「てんかん重積がなくなった」、「てんかんの頻度が減った」、「てんかんの激しさが軽減した」といった基準で判断されます。
 そして第二目標も難しいと判断された場合は、現行の薬を別のものに変えるという方針が取られ、再び症状のモニタリングが開始されます。これが一般的なてんかんに対する投薬計画です。

飼い主の心がけ

 犬や猫のてんかん治療は多くの場合、一生涯を通じての投薬治療が必要になるため、薬を与える飼い主の役割は非常に重要なものとなります。特発性てんかんを持病として抱えた犬の飼い主の過半数は、生活に何らかの制約を受けて心的負担を感じているそうです。犬の健康を維持するためのみならず、自分自身の生活の質を維持するためにも、飼い主は以下に列挙する項目を事前に十分理解して心がけておくことが必要です。

  • 投薬を続けなければならない理由
  • 投薬治療の目的
  • 決められたタイミングで投薬することの重要性
  • 獣医師の許可なく投薬スケジュールを変更しないこと
  • 投薬治療の副作用
  • てんかん日誌をつけることの重要性
  • 薬剤の血中濃度を計測するため定期的に動物病院を訪れること
  • てんかん発作を最小限にとどめるため獣医師監修のもと投薬スケジュールを微調整すること
  • てんかん重積の可能性が常にあることを理解すること
  • かかる費用
  • 抗てんかん薬と他の薬を同時服用すると作用が損なわれる可能性があること
  • 突然投薬を中止することは症状を悪化させること
  • 食事内容、下痢や嘔吐といったものが薬の吸収を阻害する可能性があること

 上記した内容のほか、犬がてんかんを起こした時の対処法を知っておくことも重要です。
 てんかん発作が起こったとき、基本的に飼い主の側でできることはなく自然に発作がおさまるまで待ちます。ただし嘔吐などを伴う場合は気道が詰まって呼吸困難に陥ることもありますので、口の中の異物を取り除いてあげましょう。また溺れる危険性があるため、基本的に水泳は禁止した方が無難です。
 てんかんの前駆症状として、妙に甘えてくる、水をたくさん飲む、昏睡するなどの症状を見せるものがいます。こうした徴候が見られたら、犬を高いところから床におろす、クッションを敷いてあげるなど、倒れても危険ではない状況を作ってあげます。発作が起こった日にちと時間を記録しておき、その犬固有の発作のパターンを把握することも重要です。 またてんかん発作を起こしている様子を動画で記録しておくと、何かと役に立つでしょう。

 

【最後に】

大切なペットの具合が悪くなり、動物病院へ行くと、かなりの請求金額になる事はよくあります。
いざという時の為にも必ず人と同様に保険には入っておきましょう!

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