犬の肝硬変~愛犬が元気がなく、食欲が落ちてきたら~
犬の肝硬変(かんこうへん)とは、肝臓に慢性的な炎症が起こることで線維組織が増殖し、肝臓全体が硬く変質してしまった状態を言います。
つまり、肝硬変は病気の名称ではなく、さまざまな原因によって肝臓が長い間ダメージを受け続けた結果、肝臓の機能を失ってしまう状態です。
肝臓内で繰り返し炎症が起こると、集まってきた免疫細胞によって線維芽細胞(せんいがさいぼう)が刺激され、コラーゲン線維を始めとする各種のタンパク質が生成されます。
このようにして、細胞外の線維部分(細胞外基質)が必要以上に増えてしまった状態が「肝線維症」(かんせんいしょう)です。
肝硬変とは、この肝線維症が長期化し、肝臓全体の構造が変わってしまった末期的な状態だとも言えます。
肝臓は解毒、ビタミンやホルモンの生成、炭水化物、脂質、タンパク質の合成や分解、消化酵素の生成など数百の役割を担っています。
一度変性してしまった肝臓は、治療によって悪化を食い止めたり、進行を遅らせたりすることは可能ですが、もはや元に戻すことはできません。
ここでは、犬の肝硬変(かんこうへん)の主な原因はもちろん、症状から対処法などをまとめていますので、是非ご参考になさって下さい。
- 犬の肝硬変の主な症状
- 犬の肝硬変の主な原因
- 犬の肝硬変の主な治療法
犬の肝硬変の主な症状
肝硬変の主な初期症状は、「食欲不振」、「疲れやすい」、「体重減少」などですが、これらを一般的によく見られる症状であり、特に目立った症状が現れにくい病気です。
つまり、肝硬変の特徴的な症状である黄疸、腹水の貯留とが表れ始めた頃には、もうかなり肝硬変が進行していることが多いです。
主な症状 |
☆元気が無くなる |
☆食欲不振 |
☆少しずつやせていく |
☆おなかがふくれる(腹水) |
☆黄疸(おうだん=白目や歯茎が黄色く変色する) |
☆肝性脳症(かんせいのうしょう) |
犬の肝硬変の主な原因
犬の肝硬変は、ウイルスや寄生虫、薬物等による慢性肝炎や急性肝炎にかかったことが最も有力な原因であるとされています。
そもそっも肝臓は再生力の強い臓器といわれており、多少のダメージであれば、再生することが出来ます。
しかし、長期間強いダメージを受け続けると再生が追いつかなくなり、肝臓の機能はどんどん落ちていきます。
- 慢性肝炎
慢性肝炎によって繰り返し肝臓に炎症が起こると、そのたびに線維組織が増殖して破壊された部分を修復しようとします。
最終的には組織を保護するはずの線維が多くなりすぎ、肝臓全体を硬く変質させてしまいます。 - 肝臓の細胞の大量死滅
何らかの理由によって肝臓内の細胞が一気に大量に死んでしまうと、それに対する過剰反応として線維が増えてしまうことがあります。
このパターンでの発症はまれです。 - 原因不明
原因不明のまま、症状だけが進行してしまうことがあります。
こうした場合は便宜上「特発性」(とくはつせい)、すなわち「原因がよくわからない」肝硬変として扱われます。
犬の肝硬変の主な治療法
肝硬変の治療には薬物療法とともに、食事療法がたいへん重要だと考えられています。
肝臓機能を回復させるためには、十分な栄養が必要ですが、タンパク質を大量に与えると、肝臓に負担をかけてしまうことがあります。
ですので、獣医師さんの指導の下、食事についても適切にコントロールをする必要があります。
- 栄養補給、安静、食事療法
肝硬変は一度かかってしまうと完治することはほぼ不可能です。
ですから疾患の原因を取り除くよりも、症状の軽減を目的とした治療が施されます。具体的にはサプリメントなどの栄養補給、安静、食事療法などです。 - 腹水への対処
おなかに水が溜まって苦しそうな場合は、まず利尿剤が投与され、それでも改善しない場合はおなかの中に注射針を刺して水を吸い取ります(腹水穿刺)。 - 投薬治療
肝炎の症状に合わせた投薬が行われます。
抗酸化剤、亜鉛、銅キレート剤、免疫抑制剤、抗線維化物質といった選択肢がありますが、投薬は病気を治すのではなく症状の悪化を抑えるためのものであって、一生涯継続する必要があります。
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