犬の血小板減少症~ぶつけていないのに痣や点状の出血があったら~
犬の血小板減少症(けっしょうばんげんしょうしょう)は、血液中に存在する小さな細胞である血を固める作用を持つ血小板の数が病的に減ってしまった状態を言います。
治療が遅れると重症になることもあるため、早期発見・治療が重要です。
血小板(けっしょうばん)とは、血液に含まれる細胞成分の一種で、出血が起こったときに出血した部位に集まって止血する役割を担っています。
正常な状態では、毎日作り出される血小板の数と除去される血小板の数とが釣り合っており、大きな数の増減はありません。しかし何らかの理由によって血小板の生産量が低下したり、除去する量が増加したりすると、血液中の血小板数が病的に少なくなって様々な症状を示すようになります。
ここでは、犬の血小板減少症の主な原因はもちろん、症状から対処法、かかりやすい犬種などをまとめています。
- 犬の血小板減少症の主な症状
- 犬の血小板減少症の主な原因
- 犬の血小板減少症の主な治療法
犬の血小板減少症の主な症状
血小板減少症は、血液を凝固させる役割の血小板が異常に少なくなるため出血が起こりやすくなり、皮膚に内出血による痣(紫斑)や点状出血がおきたり、鼻出血や血尿、歯肉からの出血、血便などの症状が起こります。
点状出血はごく小さいことも多く、注意して観察しないと見逃すこともあります。点状出血は唇などの口腔内や白眼の部分にも現れます。
主な症状 |
☆口の中や皮膚の点々とした出血(点状出血) |
☆傷口の出血がなかなか止まらない |
☆血尿 |
☆血便 |
☆鼻出血 |
犬の血小板減少症の主な原因
- 骨髄の異常
血小板を作り出している産生工場ともいうべき骨髄に異常があると、血小板の数が減ってしまうことがあります。 - 脾臓の異常
血小板を破壊する作用を持つ脾臓に異常があると、必要以上に血小板が減らされてしまうことがあります。 - 感染症による血小板減少症
ウイルスや細菌への感染が引き金になることがあります。
犬で多いのはジステンパー、パルボウイルス感染症、レプトスピラ症、フィラリア症などです。 - 腫瘍による血小板減少症
あらゆる腫瘍が引き金となって血小板減少症になる可能性があります。
代表的な疾患は血管肉腫、悪性リンパ腫、白血病などです。 - ワクチン接種や投薬による血小板減少症
よかれと思って投与した薬剤が予期せぬ血小板の減少を招くことがあります。
よく知られているものはエストロゲン、フェニルブタゾン、フェノバルビタール、メチマゾール、アルベンダゾール、サルファ剤、アンギオテンシン変換酵素阻害薬、リバビリンなどです。
またワクチン接種が引き金になることもあります。 - 免疫機能異常
本来は体内に入ってきた外敵を攻撃するはずの免疫機構が、誤って自分の味方である血小板を攻撃して破壊してしまい、数が病的に減ってしまうことがあります。
このような発症パターンを「免疫介在性」(自己免疫性)といい、遺伝的な要因が疑われています。
好発品種はプードル、オールドイングリッシュシープドッグなどで、メスにおける発症率はオスの約2倍です。
再発率は約50%で、5頭に1頭は同じく自己免疫性の溶血性貧血を併発するといわれています。
犬の血小板減少症の主な治療法
主な治療は、最初はステロイド剤が使われ、副腎皮質ホルモンを投与し免疫を抑制します。
それでも、改善しない場合は症状によってはその他の免疫抑制剤なども投与します。
症状が非常に重い場合は、時として赤血球が破壊される場所の一つである脾臓を手術で摘出することもあります。
- 投薬による治療
一般的にはステロイド剤が使われ、状況によって他の免疫抑制剤が使用されます。
ステロイド剤は効果を発揮するのが早いですが、他の免疫抑制剤は効果が現れるまで数週間かかることも多く、必要であれば早めにステロイド剤と併用されます。
- 基礎疾患の治療
骨髄のガンや脾臓の腫瘍など、別の疾病によって血小板減少症が引き起こされている場合は、まずそれらの基礎疾患への治療が施されます。 - 対症療法
自己免疫機構の乱れが原因の場合、決定的な治療法や特効薬は今のところありません。
疾患の原因を取り除くよりも、症状の軽減を目的とした治療が施されます。
具体的には血小板の量を回復させる目的で免疫抑制剤を投与したり、免疫細胞が血小板を壊さないよう免疫グロブリンを投与するなどです。
また血小板の輸血が行われることもあります。 - 外科的治療
脾臓の過剰作用によって血小板が減っている場合は脾臓摘出が行われることもありますが、予後に関してはそれほどよくないようです。
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