犬の熱中症

犬の熱中症~愛犬がふらついたり、呼吸が荒かったら~

犬の熱中症とは、上がりすぎた体温をうまく下げることができず、体中の機能が低下してしまった状態のことです。
平熱が37.5~39.2℃の犬においては深部体温(直腸温)が41℃を超えた場合に熱中症と診断されます。
41℃を超えると熱によって脳にまでダメージが及び始め、43℃を超えると体中の様々な器官が機能不全に陥って急激に死亡率が高まります。
さらに49~50℃というと極端な温度にまで高まると、たった5分でも細胞の構造が崩れて組織の壊疽が始まり、そうなると生存する事が困難となります。
なお熱中症と紛らわしい表現として「高体温症」「発熱」「熱痙攣」「熱疲労」「熱射病」などがありますが、全て別々の意味を持っています。
それぞれの意味は下記にまとめしたので、是非確認して下さい。

ここでは、犬の熱中症の主な原因はもちろん、症状から対処法などをまとめていますので、是非ご参考になさって下さい。


  • 熱中症と紛らわしい表現の意味
  • 犬の熱中症の主な症状
  • 犬の熱中症の主な原因と予防法
  • 熱中症になりやすい犬種や特徴

熱中症と紛らわしい表現の意味

高体温症 犬の平熱である37.5~39.2℃(深部体温)を超えた状態のことです。
「発熱」と「熱中症」の両方を含むため、熱中症と完全に同義語というわけではありません。
発熱 体内に侵入した細菌やウイルスの増殖を抑えるため、体が自分の意志で体温を上げた状態のことです。
体温を下げてしまっては意味がないので、通常パンティングは起こりません。
熱痙攣 軽度の熱中症のことです。
人間においては、発汗に伴う水分とナトリウムの喪失によって筋肉のけいれんが起こるため、こう呼ばれます。
熱疲労 中等度の熱中症のことです。
皮膚や筋肉への血流量が異常に増えることで血液循環がおかしくなり、体温調整機能が破綻(はたん)した状態を指します。
熱射病 重度の熱中症のことです。
体内に長時間熱がこもった結果、脳内の体温調整中枢が破壊された状態を指します。
体温は42度を超え、細胞の壊死(えし)、タンパク質の変性から全身性炎症反応症候群(SIRS)を経て多臓器不全、そして死に至ります。

※パンティング:呼吸が激しくなる(頻呼吸)。体温調節の動作の一種

犬の熱中症の主な症状

1.初期の症状

  • 「ハッハッハッ」と呼吸が荒い(パンティング)
  • よだれをダラダラ垂らす
  • 心拍数の増加(頻脈)
  • 呼びかけへの反応が遅い・反応しない
  • 日陰に行きたがる
  • 歩きたがらずその場にうずくまる
  • ふらつく(運動失調)
  • 歯茎などの粘膜が乾燥する
  • 口の中が鮮やかな赤色になっている
  • 大腿動脈の脈拍が異常に早かったり、弱かったり
  • 吐く・嘔吐する
  • 視覚障害(皮質性)

2.進行した時の症状

  • 血液の循環不全
  • 脳症
  • 腎不全
  • 心筋症
  • 肝不全
  • 消化器の虚血や梗塞
  • 播種性血管内凝固症候群(DIC)
  • 横紋筋融解症
  • 急性呼吸窮迫症候群(ARDS)
  • 点状出血・斑状出血
  • 血便
  • 下痢
  • ミオグロビン尿(コーラ色)
  • 意識混濁
  • けいれん
  • 昏睡

3.遅れて発生する症状

症状が消えたことに安心して病院に連れて行かなかったりすると、3~5日後になって遅延性症状を示すことがあります。

  • 腎不全による乏尿~無尿
  • 肝不全による黄疸
  • 心不全による不整脈
  • 呼吸器不全によるARDS
  • 播種性血管内凝固症候群(DIC)
  • 発作

犬の熱中症の主な原因と予防法

犬における熱中症の死亡率は時として50%に及びます。
昨日まで元気だったわんちゃんと突然の悲しいお別れをしなくてすむよう、一つ一つの原因についてしっかりとリスク管理を行ってください。

高い気温

外の気温が高くなる夏において発症リスクが高まります。
太陽の直射による熱のほか太陽によって温めれた地面からの輻射熱によって体温が上がりやすい状態になっています。
ちょうど上下から魚を焼く二面グリルのような感じです。
また室内やトリミングサロンにおいても、ドライヤーを長時間あてることによって発症することがあります。

散歩中の熱中症予防
快適に散歩できる気温はおよそ15~25℃の範囲内です。
25℃を超えるような日は散歩の時間を日中からずらし、太陽から受ける直射日光の量を減らしましょう。
また夏場のアスファルトはまるでフライパンのように熱くなっていることがあります。
道路の温度は必ず手のひらで確認し、熱くなっていないことを確認してください。
 
屋外飼育の熱中症予防
  • 室内に入れてあげることが一番です。
  • 日陰を作る
    直射日光をさえぎる「すだれ」や「よしず」、ビニールシートのようなものを小屋周辺に設置しましょう。

  • 飲み水を切らさない。
    夏場はボールに入れた水も早く蒸発してしまいます。
    2~3時間おきに犬の飲み水を確認し、絶対切れないようにします。

  • 犬小屋を高床式にし、熱せられた地面からの熱が、直接床に伝わらないようにしましょう。
  • 犬小屋の入り口が太陽の指す方向に向かないようにしましょう
  • 体温より冷たい水に入るとかなりの冷却作用がありますが、必ず飼い主監視の下で入らせてください。
  • 犬小屋用扇風機扇風機には小屋の中にこもった熱い空気を若干低い外気と入れ替える効果はありますが、注意点もあります。
    まず一つは、犬が好奇心にかられて触ると、怪我をしてしまう恐れがあるという点です。
    そしてもう一つは、外気温が体温と同じ、もしくは体温より高い場合、扇風機は体にドライヤーを当てているのと同じことになり、逆効果になってしまうという点です。
    使用する場合は外気温を確認し、飼い主が監視した状態を基本としてください。

  • 犬小屋周辺に打ち水をすると、若干地面の温度が下がってくれます。
    また、犬小屋の外壁に水をかけても、少しだけ小屋内の気温上昇を抑制してくれます。

屋内での熱中症予防

電気代をケチってエアコンを付けないでいると屋内においても熱中症にかかる危険があります。
犬に扇風機を当てても体温を大幅に下げることはできませんので、カーテンを閉めて日光を遮り、ちゃんとエアコンを付けて室温管理をしてあげましょう。
設定温度の目安は人間も犬も快適に過ごせる24~25℃です。

高い湿度

湿度が高い場合、熱中症の発症率が高まります。
犬が体温を下げるときはパンティングと呼ばれる激しい呼吸によって粘膜の表面積を増やし、そこから気化する体液の気化熱によって体温を下げます。
空気が乾燥しているときは効果的に体液の気化が促されますが、空気がじめっと湿っているとなかなか気化が起こらず体温も下がってくれません。
 
湿度が高い時の熱中症予防

日本では梅雨時期(5月~7月)になると湿度が高まりますので、たとえ太陽が出ていなかったとしても熱中症に気をつけておく必要があります。
犬が見せる初期症状はとりわけ注意深く見ておくようにしましょう。これは屋内においても同様です。

不十分な換気

換気が不十分な環境では熱中症の危険が高まります。
犬が体温を外界に放出する際は、体表面と気体とが接触することによって熱を移動する「対流」という方法もわずかながら利用しています。
対流が起こるには体温よりも低い温度の空気を継続的に体表面に当て続ける必要がありますが、換気が悪い場所だと空気の入れ替えが起こらず、ぬるい(体温と同じ)~生暖かい(体温よりも高い)空気が体に当たり続けます。

換気による熱中症予防

窓を閉め切った部屋や車の中では空気の流れがよどんで対流による熱の放散が起こりません。
基本的には窓を開けて通気を良くしましょう。
ただし空気が体温よりも高い場合は、ちょうどドライヤーをかけたときのように逆に体温が上がってしまいます。
対流熱伝達が起こるためには「空気の温度が体温よりも低い」ことが条件になりますので、流れる風があまりにも熱い時は逆に窓を閉めましょう。

 

短頭種・鼻ぺちゃ

マズルが短い短頭種の犬では熱中症のリスクが高まります。
つぶれた鼻先によって空気の通りが悪くなり、効果的な気化が妨げられます。
また空気を吸ったり吐いたりする時の空気抵抗が大きくなる分、呼吸筋を激しく収縮しなければならなくなり体温が上がりやすくなってしまいます。
 
短頭種の熱中症予防

夏場は日中の散歩を避ける、こまめに水分を補給させる、激しい運動させないといった配慮によって、鼻ぺちゃというハンデを補ってあげましょう。
だし「短頭種気道症候群」を発症している場合は外科手術によっていくらか改善する可能性もあります。
呼吸するたびに「グーグー」と鼻の奥から奇妙な音が出るような重症例の場合は、いちど動物病院に相談してみましょう。

熱中症になりやすい犬種や特徴

短頭種
パグフレンチブルドックボストンテリアチワワシーズーなど鼻の短い犬種は熱中症になりやすいです。
上部気道と言って鼻から鼻腔、鼻咽腔、咽頭、喉頭が狭いため、水分を蒸散する能力が低く、熱中症になるリスクが非常に高いです。

北欧犬種
シベリアンハスキーサモエドなどの本来は涼しい地域で過ごしていた犬種は暑さに弱く、毛も密度が高いために熱がこもりやすく熱中症になりやすいです。

毛色が黒い犬
毛が日光の熱を吸収しやすいため注意が必要です。

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