犬の無駄吠えはご近所の方々にも迷惑を掛けてしまい、トラブルの原因にもなってしまう問題行動の一つです。
「犬の無駄吠え」というのは、飼い主さんを悩ますペットの問題の中でかなりの方々が悩んでいる行動でしょう。
「近所迷惑になっているのではないか?」「自分の調子が悪い時に吠えられると辛い・・・」など悩まされる事でしょう。
しかし、犬たちにとって「吠える」という行動に悪気は全く無く、怒られる筋合いは無いのかも知れません。
無駄吠えと言っても、「無駄」だと思っているのは、われわれの人間の都合です。
それでも人間社会で共存していく為には、対処していく事が必要となります。
吠えてしまう理由によって対処法が異なりますので、最適なしつけ方法を見つけていきましょう。
ー 無駄吠えのしつけ方法
ー しつけの成功を阻む要素
ー 自発的回復について
犬はなぜ吠えるのか?
そもそも犬は吠える動物と言えるでしょう。
特に「ボーダーコリー」や「シェットランドシープドッグ」などの牧羊犬は、羊などを追い込む為に吠える事が必要でしたし、「ダックスフンド」や「ビーグル」などの猟犬は飼い主に危険を知らせたり、獲物を追い詰める為に吠える習性が備わっているため、吠えるのは当たり前のことです。
それ以外の犬種でも、危険を知らせる為であったり、威嚇する為に吠えたりするのは当たり前の行動と言えます。
その上で、われわれ人間の生活環境や近隣トラブル防止のために吠え癖を直す事が必要だという事を考えてみましょう。
そもそも犬の無駄吠えには、たくさんの種類があります。
無駄吠えという犬の行動の改善には、その根本的な原因を理解した上で、対処することが非常に大切です。
それぞれの「吠え」の特徴と原因を把握すれば、適切な対応ができるようになります。
犬の無駄吠えの原因
よくある犬の無駄吠えの原因
- 欲求不満・家族に対する要求
かわいいあまりに犬の要望に応えすぎた事により、吠えて要求をすれば願いを叶えてくれると思ってしまい、無駄吠えを助長させてしまうようになります。
これは無駄吠えの原因としては、とっても多い原因と言えるでしょう。吠えたら大好きなおやつをもらえたり、こっちを見て自分の名前を呼んでくれた、遊んでくれたり構ってもらえたなど、そういった経験の積み重ねで、「吠えればおやつもらえる」「吠えれば遊んでくれる」と認識してしまった場合や、吠えれば何でもしてくれると認識した為、自分のほうが飼い主よりも立場が上と思いこんでいる場合にも要求吠えをすることがあります。
また、逆にあまりにも構わな過ぎた為に、欲求不満となり、「散歩に行きたい!」「遊んで欲しい」「水が欲しい」と要求する為、吠える事があります。
- 分離不安
度重なる長時間の留守番や屋外につなぎっぱなしなど、極度に寂しい思いをさせてしまうと精神的に不安定になり、無駄吠えをする事が多々あります。
犬たちはとっても寂しがり屋です。
われわれ人間の寂しさを埋めるために赤ちゃんの頃に母犬から引き離され、人間の家で飼われる為にペットショップへ連れていかれるのです。
そういった事を踏まえて、ワンちゃん達の事を考え、愛情を注いでください。また心の問題だけではなく、病気によって不安が引き起こされる場合もありますので注意しましょう。
- 恐怖
犬もわれわれ人間と同様に、慣れない環境にいると不安な気持ちになります。特に初めての場所に連れて行ったり、知らない人が現れたりすると怖くなり、恐怖吠えをしてしまうようです。
また、過去の経験によるトラウマも恐怖吠えの原因になります。
例えば、誰かが来る際の『呼び鈴』や散歩中やドッグランの中で見知らぬ犬に追いかけられたり、吠えられたりなど、危険な目に遭ったときと似たような状況に陥るとつい当時を思い出し、恐怖吠えをしてしまうこともあります。
注射などの痛い思いをした病院や急に大きな音が鳴る落雷なども恐怖心を頂かせ、吠える要因となりえます。
⇒これらは恐怖を抱かせる原因を取り除くことで無駄吠えを解消することができます。
- 縄張り意識
縄張り意識によって吠えてしまうことは犬にとって本能に従った行為であり、自然な行動です。
しかし、あまりにも度が過ぎると近隣の迷惑となってしまい、
社会との共存共栄という点でも、ワンちゃんも飼い主も住みにくい状況になってしまいますので対応が必要です。敷地に誰か入ってきた・窓から誰かの姿が見えた⇒犬の視界を変えて刺激を減らす。
例:室内犬の場合=窓にロールカーテンなどをつけて、景色に制限をつける。
屋外犬の場合=犬舎(犬小屋)を玄関の見えない場所において、刺激を減らす。 - 痛み
本来、犬は痛みに強い傾向があります。
それでもどこか痛みがある個所に触れようとした際に吠えた時には迷わず病院へ行きましょう。
重大な病気やけがの可能性があります。
少しでも躊躇したら、取り返しのつかない事になるでしょう。 - 投薬
糖質コルチコイド薬の影響2016年、ニュージーランド・リンカーン大学のロレーラ・ナトーリ氏の調査によると、糖質コルチコイド薬の投薬によって無駄吠えが増えたという報告がありました。
参照:L.Notari(2016)「Exogenous Corticosteroids and Dog Behaviour」
この調査は糖質コルチコイド投薬治療を受けたことのある31頭の犬の飼い主さんを対象とし、投薬中と投薬後の犬の行動の変化についての回答をしてもらい、11頭に無駄吠えや驚きやすくなった、怒りっぽくなったという変化があったということです。
- 認知症
犬の認知症は老化による脳の衰退によって引き起こされます。 夜になっても寝ずに吠え続けていたりした場合、認知症の疑いがあります。
老化が始まる時期は犬種により異なりますが、おおよその目安として下記に大まかな年齢を記しました。
もし、下記の時期から無駄吠えが増えたと場合には、認知症の可能性も考えられます。- 小型犬:9~13歳
- 中型犬:9~11歳
- 大型犬:7~10歳
- 超大型犬:6~9歳
- 社会的促進
他の犬の吠え声に連られて⇒元になっている犬をしつける
無駄吠えの解決方法
無駄吠えのしつけ方法
フォーマットトレーニング
フォーマットトレーニングとは、犬の状態を「アイコンタクト」と「オスワリ」、「マテ」などで初期化(フォーマット)するための基本的なトレーニングです。
食事や散歩などの犬にとって必要不可欠な刺激を与える前に、必ず犬をフォーマットします。
日ごろからこのフォーマットトレーニングを行っておけば、犬の無駄吠えが発生したときに「オスワリ!」という指示を出しただけで、問題行動をストップさせることができるかもしれません。
具体的には問題行動予防トレーニングをご参照ください。
タイムアウトを用いた無駄吠えのしつけ
家族に対する要求で愛犬が吠えている場合、それに応えてしまえばさらに吠えるようになってしまいます。その場合は無視をして、要求吠えは意味がないと覚えさせ、あきらめさせるようにしましょう。
- 犬に要求吠えをさせる 犬が要求吠えする状況を作りましょう。
- タイムアウトの適用 犬が吠え始めたら、犬を空気のように扱い、無視しましょう。
- おとなしくなったらごほうび
犬が大人しくなった瞬間、「いいこ」とほめ、おやつをあげましょう。
これを何度も根気よく繰り返して下さい。 - プルーフィング
吠え癖がある程度直ったら、場所やおやつを与える頻度などをランダムにしてしつけを繰り返します。
これをプルーフィングといいますが、これが不十分だと自分の家以外では無駄吠えをしてしまう恐れがあります。
拮抗条件付け(きっこうじょうけんづけ)による無駄吠えのしつけ
拮抗条件付けとは、犬にとって不快の原因になっている「玄関のチャイム」などの刺激を、徐々にポジティブな事のきっかけに転換していくことです。
- 犬が吠える状況を作る 犬が恐怖・不安吠えする状況を再現しましょう。例えば、犬が吠え出す原因が「来客」だった場合、お友達に来客役をやってもらいましょう。
- 犬が吠えやむのを待つ 来客が家のドアを開けたことに気づき、吠え始めます。疲れたり、息継ぎなどでいずれ吠えるのを止める時が来るので、その瞬間におやつをあげましょう。これを繰り返し行いましょう。
このように、最初は不安だった「来客」が、おやつがもらえる合図としてポジティブなイメージへと変更されていく事です。
これが「拮抗条件付け」です。
系統的脱感作(けいとうてきだつかんさ)による無駄吠えのしつけ
系統的脱感作とは、犬が「かみなり」などの苦手なものを、ごく弱い刺激から少しずつ強めていき、慣らしていくというものです。
- 犬が吠える状況を作る
犬が恐怖・不安吠えする状況を再現しましょう。
例えば、犬が吠え出す原因が「カミナリ(雷鳴)」だった場合、携帯電話で「雷鳴」をダウンロードするなど、再生できる環境を整えましょう。 - 刺激を極限まで薄める
犬が反応しないくらい小さな音で「雷鳴」を再生しましょう。
音を聞いてもじっとしていたらおやつをあげて下さい。
犬が吠え始めたら、もう少し音量を下げましょう。 - 刺激を徐々に強くする
少しずつ音量を上げて、吠えなかったら、その瞬間におやつをあげて下さい。
環境操作(刺激制御)~吠えるきっかけとなる刺激を減らす~
犬の反応を引き起こしている環境刺激自体に働きかけることで、犬の行動を変化させることです。
たとえばクマのぬいぐるみを見ると攻撃性を示す場合、ぬいぐるみ自体を家の中から排除するなどです。
サプリメント・投薬治療
吠えの原因が過度の不安や認知機能の低下である場合、サプリメントや薬物療法も視野に入れる必要があるでしょう。
基本的には、これらの処方は獣医師が行いますので、問題行動を専門とする「行動診療科」での診察を下に相談をするといいでしょう。
また、ケガや病気などの身体的な問題が原因で吠えている場合は、それらの身体的な疾患の治療を優先して行う必要があります。
しつけの成功を阻む要素
PREE
PREEとは部分強化消去効果のことで、例えば、子犬の頃から吠えることで飼い主の気を引いてきた犬は、「関心」というごほうびを時には得られたり、または得られなかったりした事で「吠える」という行動が強化されてきたことになります。
消去バースト
消去バーストとは、一度癖になった行動を消そうとするとき、一時的に行動が通常より増えてしまう禁断症状のようなものです。
自発的回復について
しつけにより直ったと思われた吠え癖なども、再発することがあります。
「自発的回復」と呼ばれる現象で、一度は直ったと思っていても、抜き打ちチェックのように犬のしつけをやり直し、一度成立した条件付けを強固にしておく必要があります。
やってはいけない解決方法
大きな声で叱ってはいけない
愛犬が吠え時に、どうしても叱ってやめさせようとする飼い主さんは多いと思います。
しかし、犬は一瞬吠えるのをやめたと思ったら、すぐに吠え続けるなんてことはよくある事です。
叱る事によって、大好きな飼い主さんに注目されると思い、逆に吠えるのを助長させることになる可能性があります。
ですので、われわれ飼い主は犬の吠える原因に目を向け、根本的な改善のために、その原因を取り除く対応をしていきましょう。
特に下記の対応は、絶対に行わないで下さい。
- ショックカラー:犬が吠えた瞬間に電流が流れて痛みを与える首輪
- 声帯切除手術:犬の声帯の一部に切れ目を入れて声が出にくくする
これらはいずれも犬に対するストレスが大きく、電気ショックカラーに関しては2017年、欧州医療動物学協会(ESVCE)が科学的な証拠に基づいき「百害あって一利なし」と結論づけています。
まとめ
犬にとっては、無駄吠えなんてもにはなく、ごく自然な行動でしかありません。
犬には大切な意味があって、必要があるので吠えているだけです。
それを踏まえた上で、吠える理由を理解しましょう。
多くの場合、犬が吠える原因は生活環境や飼い主さんの対応にあります。
吠えたからと言って、大声で叱ったり、ましてや体罰を与えるなんてもってのほかです。
そんな事をしたら、信頼関係そのものが壊れてしまいます。
われわれ飼い主が愛犬の事を理解をしてあげなければ、犬が変わることはないでしょう。
われわれ飼い主が、愛犬の生活環境や接し方の改善を行えば、愛犬が安心して暮らせるようになるでしょう。
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