犬の脂漏症~愛犬のフケや体臭が気になりだしたら~
犬の脂漏症(しろうしょう)とは、皮膚の新陳代謝が異常に速くなり、全身の皮脂腺の分泌が過剰になったり、皮膚の角化が異常に亢進した状態をいいます。
「脂漏性皮膚炎」、「マラセチア皮膚炎」とも呼ばれます。
症状としては、皮脂が多く皮膚が脂っぽくなったり、逆に皮膚が乾燥したりします。
マラセチアは犬の外耳道、肛門嚢、指の間、唇、皮膚粘膜などに常在しているありふれた酵母です。
通常であれば、犬の皮脂腺から分泌される脂質を栄養分としながらのんびり暮らしていますが、何らかのきっかけによって突如病原体と化してしまうことがあります。
この変化を生み出している要因は定かではありません。
おそらく「宿主の免疫力低下」、「脂質の過剰分泌」、「皮膚表面の湿度の上昇」、「皮脂の成分の変化」、「角質層への微小ダメージ」などが複雑に絡み合って発生するのだろうと推測されています。
マラセチア属は、プロテアーゼ、リパーゼ、ホスホリパーゼ、リポキシゲナーゼといった各種の分解酵素を放出し、皮膚におけるタンパク質の分解、脂肪の分解、pHの変化を誘発します。
こうした変化が炎症反応を引き起こし、様々な症状として現れます。
好発部位は、唇、耳、四肢の内側、腋の下、鼠径部(太ももの付け根)、しっぽの付け根などです。
ここでは、犬の脂漏症の主な原因はもちろん、症状から対処法、かかりやすい犬種などをまとめていますので、是非ご参考になさって下さい。
- 犬の脂漏症の主な症状
- 犬の脂漏症の主な原因
- 犬の脂漏症の主な治療法
犬の脂漏症の主な症状
脂漏症の代表的な症状は、乾燥した光沢のない被毛、過剰なフケ、べとつきのある皮膚、体臭が強くなる、痒がる、脱毛などの症状がみられます。
主な症状 |
☆脂っぽい滲出物 |
☆カビに似た悪臭 |
☆被毛のべとつき |
☆フケの増加 |
☆発疹・紅斑 |
☆引っ掻き・脱毛 |
☆外耳炎 |
犬の脂漏症の主な原因
- かかりやすい犬種
脂漏症を発症しやすい犬種がいくつか確認されています。
具体的には下記の通りです。
ウェストハイランドホワイトテリア
トイプードル
バセットハウンド
ダックスフント
シーズー
ジャーマンシェパード
シルキーテリア
イングリッシュセターなどです。 - 何らかの理由で、マラセチアが常在している皮膚表面の角質層が変化してしまうと、脂漏症につながってしまう可能性があります。
具体的には、長すぎる被毛による温度や湿度の上昇、成長や老化に伴うしわの出現、未知の理由による角化異常や皮脂腺からの異常分泌などです。 - 摂取する栄養の偏りが脂漏症を引き起こす可能性があります。
具体的には、脂質が多すぎる、脂質が少なすぎる、ビタミン・ミネラル不足(銅・亜鉛・ビタミンAなど)などです。 - 甲状腺ホルモンや性ホルモンなど、体内におけるホルモンの分泌障害が脂漏症を引き起こす可能性があります。
- アトピー性皮膚炎や接触性アレルギーを起こしやすい犬ではやや発症しやすいと言われていますので、アレルギー体質が何らかのかかわりを持っている可能性があります。
マラセチアからは10を超える抗原(アレルギーの元)が確認されており、こうした抗原に対する反応の違いが、個体間における症状の有無につながっているのかもしれません。 - マラセチアは、皮膚の常在菌であるブドウ球菌と共生関係にあると考えられています。
何らかの理由でブドウ球菌が多くなりすぎたり少なくなりすぎたりすると、共生しているマラセチアの生活リズムが崩れ、異常増殖につながってしまう可能性があります。
脂漏症と膿皮症が併発しやすい理由も、ここにあるのかもしれません。
犬の脂漏症の主な治療法
- 基礎疾患の治療
別の疾病によって脂漏症が引き起こされている場合は、まずそれらの基礎疾患への治療が施されます。
たとえばホルモン異常が原因と思われる場合はホルモン剤を投与するなどです。 - 油分の投与
食事中の脂分が原因と考えられる場合は、脂肪酸製剤や動物性脂肪、コーンオイルなどを与えます。 - 脂漏症用シャンプー
脂漏症に合わせた抗脂漏シャンプーを用い、薬浴を行います。
またシャンプーの後に皮膚を軟化させるリンスが用いられることもあります。
なお、膿皮症を併発している場合は併せて治療することが必要です。 - 食事管理
ビタミンや亜鉛・銅などのミネラル不足が原因と考えられる場合は、補助製剤が投与されます。
これらは皮膚の再生やバリア機能の保持にとって重要な働きをしています。
犬の脂漏症の予防
脂漏症の予防は常日頃から皮膚を清潔に保つため、定期的なシャンプーやブラッシングなどのケアを適切に行い、栄養バランスの整った食事を摂取することが大切です。
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