犬の認知症~今まで出来ていた事が出来なくなったら~
家族の一員として愛され、一緒に過ごす時間が増えるほど、犬と人間の絆は深まります。
しかし、その一方で、愛犬が年齢を重ねるにつれて変化する行動や習慣に気づくこともあるでしょう。
もしかすると、その変化は「犬の認知症」、正式には「犬の認知機能障害」のサインかもしれません。
愛犬が長生きするために、この症状を理解し、適切な対応ができるように、まずは知識を深めてみませんか?
ここでは、犬の認知症の主な原因はもちろん、症状から対処法、かかる前の予防などをまとめていますので、ぜひ参考になさって下さい。
犬の認知症の概要
「犬の認知症」、あるいは正式には「犬の認知機能障害」(Canine Cognitive Dysfunction:CCD)は、年齢とともに犬の脳が変性する病態を指します。
人間のアルツハイマー病と似た現象で、脳の神経細胞が減少し、脳の機能が徐々に低下します。
これにより、犬は行動や記憶、学習能力に変化を見せ始めます。
犬が中高齢に差し掛かると、認知症のリスクが高まります。
特に7歳以上の犬には多く見られ、その割合はさらに年齢が上がると増えます。
症状は進行性で、時間とともに悪化します。
しかし、認知症は加齢とともに必ず現れるわけではありません。
そのため、異常な行動や変化に気づいたら、まずは獣医師に相談し、他の病気が原因でないか確認することが大切です。
また、早期発見、早期対応が症状の進行を遅らせる可能性があります。
犬の認知症の主な症状
犬の認知症の症状は多岐にわたり、また症状の程度も個々の犬で異なります。
しかし、以下のような一般的な兆候に注目することで、早期に病状を見つけ出すことが可能です。
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混乱や方向感覚の喪失:
犬が家の中で迷ったり、知っているはずの場所で混乱することがあります。
また、頻繁に壁や家具にぶつかることもあります。 -
行動の変化:
以前は楽しんでいた活動に興味を示さなくなったり、無表情になったりします。
一方で、無目的な歩き回りや過度の吠えるといった行動も見られます。 -
スケジュールの乱れ:
食事の時間や散歩の時間に混乱することがあります。
また、夜中に活動したり、昼夜逆転したりすることもあります。 -
トイレトレーニングの失敗:
家の中で排泄をするようになるなど、トイレトレーニングを忘れてしまうことがあります。
これらの症状は認知症特有のものであるとは限らず、他の病気や状態でも引き起こされます。
したがって、これらの症状が見られた場合は、必ず専門家の意見を求め、適切な診断を受けることが重要です。
犬の認知症には様々な症状がありますが、基本的には今まで出来ていた事が出来なくなったら、疑いがあると思った方がいいでしょう。
犬の認知症の主な原因
犬の認知症、または”犬の老化に伴う認知機能低下”は、基本的には加齢による脳の変化によって引き起こされます。
この変化には、特定の原因が指摘されることは少ないですが、以下の要素が関連していると考えられています。
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神経細胞の劣化:
犬が年を重ねると、脳の神経細胞が自然に劣化し、その機能が低下します。
これにより、思考、記憶、学習能力などが影響を受けることがあります。 -
酸化ストレス:
体内の自由基と抗酸化物質のバランスが崩れると、細胞が酸化ストレスに晒されます。
これが神経細胞に影響を及ぼし、認知症の原因となることがあります。 -
血流の低下:
加齢により血管が硬化し、脳への血流が低下すると、酸素や栄養素が脳に十分に供給されず、神経細胞の機能が低下します。
これらの要素は互いに影響し合い、結果的に犬の認知機能の低下を引き起こす可能性があります。
ただし、すべての犬が認知症になるわけではなく、個々の犬の遺伝的要素やライフスタイルなども影響を及ぼします。
また、認知症は進行性の疾患であり、症状が見られるようになると完全に治ることは少ないです。
犬の認知症の主な治療法
犬の認知症の治療は、その症状の進行を遅らせ、犬の生活の質を保つことを主な目的としています。
治療方法は多岐にわたりますが、以下のような手段が主に取られます。
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薬物療法:
一部の犬に対しては、医薬品が処方されます。
例えば、抗酸化物質、ビタミンE、抗アミロイド薬、血流改善薬などが用いられ、神経細胞の保護や脳の血流改善を図ります。 -
栄養補助食品:
オメガ3脂肪酸、抗酸化物質、ビタミンB群など、特定の栄養素が認知症の進行を遅らせるのに役立つとされています。 -
環境改善:
犬の生活環境を整えることも重要です。例えば、毎日の散歩や適度な運動、規則正しい食事と休息の時間、ストレスを減らすための環境調整などが考えられます。 -
認知トレーニング:
新しいトリックやゲームを教えるなどして、脳を刺激し続けることは、認知症の進行を遅らせる可能性があります。
治療方法は個々の犬の症状、年齢、全体的な健康状態により異なるため、適切な治療法は獣医師との相談の上で決定することが最善です。
犬の認知症の予防法
犬の認知症は完全に予防することは難しいですが、その発症リスクを減らす、または進行を遅らせるための対策はいくつかあります。
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定期的な運動:
定期的な体調維持のための運動は、心臓病予防に効果的であり、心臓から脳への血液流通を向上させ、脳機能を維持するのに役立ちます。 -
バランスのとれた食事:
高品質のプロテイン、ビタミン、ミネラル、オメガ-3脂肪酸など、必要な栄養素を含むバランスの良い食事は、脳の健康を維持するのに重要です。 -
精神的刺激:
新しいコマンドの学習、パズルトイやインタラクティブなおもちゃの使用など、犬の脳を刺激し、認知機能を向上させる活動が有効です。 -
定期的な健康診断:
定期的な健康診断は早期発見につながり、早期治療によって症状の進行を遅らせることが可能になります。
これらの対策を通じて、愛犬の健康的な生活をサポートし、可能な限り長く快適な生活を送らせることが目指されています。
それでも、完全な予防は困難であるため、愛犬の行動や様子に留意し、変化が見られた場合は速やかに獣医師に相談することが大切です。
犬の認知症の予後
犬の認知症は、その本質上、進行性の疾患であり、現時点では根治治療は存在しません。
しかし、その進行は適切なケアと治療により遅らせることが可能です。
予後は個々の犬とその特定の症状、そしてその症状がどれだけ早く発見され、適切に管理されるかに大きく依存します。
軽度の症状であれば、適切な環境変更、食事療法、補足療法、および薬物療法により、愛犬は数年間、快適な生活を送ることが可能です。
しかしながら、認知症の進行により行動や生活習慣の変化が悪化し、犬自身の生活の質が著しく低下した場合、人道的な観点から安楽死を選択する飼い主もいます。
これは個々の犬の状態と飼い主の判断によるもので、一概には決められません。
そのため、愛犬の行動や態度の変化に気を配り、可能な限り早期に症状を発見し、適切な治療とケアを開始することが重要です。
そして、何よりも愛犬が幸せで、快適な生活を送ることができるよう、そのケアとサポートに最善を尽くすことが求められます。
まとめ
犬の認知症、またはカニン・コグニティブ・ディスオーダー(CCD)は、高齢の犬に見られる、思考、記憶、認知能力の衰えを特徴とする状態です。
これは人間のアルツハイマー病に類似した症状を呈します。
主な症状には、行動の変化、パターンの混乱、トイレトレーニングの問題、夜間の不安、無意味な歩き回り、人間や他のペットとの社会的な関係の悪化などが含まれます。
認知症の主な原因は、犬の脳の自然な老化プロセスで、これには酸化ストレスやプロテインの異常な蓄積などが関与しています。
治療法は症状の管理と進行の遅延に焦点を当てており、食事療法、運動、認知訓練、環境の最適化、そして特定の薬物療法が用いられます。
予防には、健康的なライフスタイル、バランスのとれた食事、定期的な運動、頭を使う活動が推奨されます。
そして、予後は個々の犬の状態と、症状がどれだけ早く発見され、適切に管理されるかによります。
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