犬の乳腺炎(にゅうせんえん)

犬の乳腺炎~乳腺の腫れや発熱、痛み、黄色っぽい母乳の排泄などがあったら~

犬の乳腺炎(にゅうせんえん)とは、母乳を産生する乳腺と呼ばれる腺組織に炎症が生じた状態のことです。
発情後や出産後授乳時期の女の子の犬に多くみられる病気です。

乳腺は通常、左右の乳頭に沿って存在する乳汁を分泌する分泌組織です。
左右に5つずつ合計10個付いており、上から「前胸乳頭」、「後胸乳頭」、「前腹乳頭」、「後腹乳頭」、「鼠径乳頭」と呼ばれます。
これらの乳腺は必ずしも左右対称ではなく、しばしば微妙にずれた感じで並んでいます。
理由は、横になって授乳するとき、子犬たちが重なり合わないようにするためです。

乳腺は女性ホルモンであるエストロゲンの作用によって増殖し、同じく女性ホルモンのプロゲステロンの作用によって発達します。
また乳汁の産生を促すのは、プロラクチンと呼ばれる別のホルモンの役割です。
各種ホルモンの影響を受けて乳汁を溜めこんだ乳腺は、子犬が乳首に吸い付いたときの刺激で覚醒し、脳内の視床下部におけるオキシトシンの産生を促します。
産生されたオキシトシンは隣接する下垂体から分泌されて乳腺を包み込んでいる筋肉を刺激し、乳汁分泌を促します。
これが「射乳」(しゃにゅう)と呼ばれる反応です。

ここでは、犬の乳腺炎の主な原因はもちろん、症状から対処法などをまとめていますので、是非ご参考になさって下さい。


  • 犬の乳腺炎の主な症状
  • 犬の乳腺炎の主な原因
  • 犬の乳腺炎の主な治療法
  • 犬の乳腺炎の予防

犬の乳腺炎の主な症状

犬の乳腺炎の主な症状は、乳腺の腫れや発熱、痛み、黄色っぽい母乳の排泄などがあげられます。
重症化すると、乳腺の炎症が広がり化膿することによって、皮膚や皮下組織が壊死することがあります。

主な症状
☆乳房の腫れとしこり
☆黄色い母乳の分泌
発熱
☆授乳拒否

犬の乳腺炎の主な原因

犬の乳腺炎の主な原因は、母乳の出口となる乳頭口から細菌が侵入することで起こります。
また、出産していなくても発情後のホルモンの影響で起こることがあります。

  • 母乳の過剰な分泌
    乳腺は特に子犬の授乳期に発達しますが、最も多く乳腺炎を発症するのもこの時期です。
    母乳が過剰に分泌されて目詰まりを起こしたり、細菌に感染することで炎症が起こってしまいます。
    また、子犬の噛み付きや引っ掻きによってできた小さな傷も要因の一つです。

  • 想像妊娠
    メス犬の中には発情が始まってからおよそ2ヶ月たつと、妊娠の有無にかかわらずホルモンの分泌が起こり、乳腺が張って乳汁が分泌されるものがいます。
    妊娠していないにもかかわらずしているかのような変化を見せることから、「偽妊娠」(もしくは想像妊娠)と呼ばれるこの現象に伴い、乳腺が炎症を起こしてしまうことがあります。

犬の乳腺炎の主な治療法

犬の乳腺炎の治療は、細菌感染が原因の場合は抗生物質を投与し、細菌の関与がない場合は消炎剤などの投与をおこないます。
また、患部を冷却し炎症を抑えます。

  • 患部の冷却
    患部を冷却
    することで血液の流入量を減らし炎症を軽減します。
    また犬が授乳中の場合は、母乳中に細菌が入っている危険性もあるため、一時中断し、人工哺乳に切り替えます

  • 抗生物質の投与
    患部が細菌感染を起こしている場合は、細菌を特定し、最も効果があると思われる抗生物質の投与を行います。
    また、抗炎症剤やホルモン剤が投与されることもあります。

  • 患部の切除
    乳腺の炎症が悪化し、膿がたまっていたり壊疽を起こしている場合は、外科手術によって患部を切除してしまいます。

犬の乳腺炎の予防

発情後に乳腺炎を起こす場合、発情のたびに症状を繰り返す傾向があります。
この場合、避妊手術をすることで再発を予防できます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

CAPTCHA