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もしも愛犬が体をしきりに掻いたら~ノミ皮膚炎やアトピー性皮膚炎などの疑いアリ~
「いつもよりも体を掻く回数が異常に多いな」、「体を掻く時間が異常に長いわ」と感じたら、要注意です!
もしも愛犬が体をしきりに掻く場合、下記の疾患が疑われます。
膿皮症
膿皮症は、皮膚上で菌が異常繁殖し、化膿して膿を排出してしまった状態です。
犬の皮膚にいる常在菌の一つである「ブドウ球菌」が、免疫機能の異常や内分泌系の疾患などによって、異常増殖してしまったことにより皮膚に湿疹ができる病気です。
犬の皮膚は上から「表皮」、「真皮」、「皮下組織」に分かれており、その全てにおいて膿皮症が発症する可能性があります。
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疥癬(かいせん)
犬の疥癬(かいせん)とは、皮膚にイヌセンコウヒゼンダニが寄生して炎症を引き起こした状態を言い、非常に痒みの強いのが特徴です。
ちなみに、このヒゼンダニは人へも感染します。
ダニは季節や犬の年齢・品種に関わりなく感染し、皮膚の最外層である角質層に穴を掘り、そこで産卵しながら約3週間生息します。
その間、皮膚の破壊、刺激性分泌物の放出、糞の排泄といった要因が免疫細胞を呼び寄せます。
これが「炎症反応」です。
免疫細胞は異物を除去しようとして各種の化学物質を放出しますが、異物だけでなく周辺の神経も刺激してしまいます。
このようにして激しいかゆみが引き起こされます。
疥癬は感染してすぐにかゆみが出るわけではなく、通常は2~6週間の潜伏期があります。
なおミミヒゼンダニが引き起こす「耳疥癬」に関してはこちらをご参照ください。
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ノミ皮膚炎
犬のノミアレルギー性皮膚炎とは、ノミの唾液によってアレルギー反応を起こし、患部が赤くなったりかゆくなったりする病気を言います。
皮膚のかゆみが非常に激しく、ノミ駆除だけでなく皮膚炎の治療も必要になります。
皮膚上にノミがいるかどうかは、「1~2ミリ程度の褐色の虫を視認できること」「濡れたティッシュなどで被毛をふき取ると、じわっと赤いしみが広がるような糞(フリーダート)が被毛中に確認できること」「0.5ミリほどの米粒を小さくしたような卵が視認できること」などで判定します。
しかし、犬が自分自身で患部を掻いたり舐めたりするため、症状があるにもかかわらず、ノミの本体を見つけることができないこともしばしばです。
ノミ皮膚炎を引き起こしているものは、主として体内の免疫系によるアレルギー反応です。
「アレルギー」とは、免疫反応が激しすぎて、本来守るべき生体に害を及ぼしてしまう状態のことで、アレルギーを引き起こす原因物質は「アレルゲン」(抗原)と呼ばれます。
ノミ皮膚炎におけるアレルゲンは、ノミの唾液(Cte f1)と糞です。これらの物質中には、アレルゲンの卵とでも言うべき低分子「ハプテン」のほか、血管を拡張する「ヒスタミン」に似た物質が含まれており、侵入した場所に痛みやかゆみを引き起こします。
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ツメダニ皮膚炎
犬のツメダニ皮膚炎とは、ダニの一種であるイヌツメダニ(Cheyletiella)の寄生によって引き起こされる皮膚炎のことです。
この皮膚炎の特徴は、かゆみ自体は軽いですが大量のフケが発生します。
皮膚症状を引き起こすツメダニとしては、主に犬に寄生する「イヌツメダニ」(C.yasguri)、主に猫に寄生する「ネコツメダニ」(C.blakei)、主にウサギに寄生する「ウサギツメダニ」(C.parasitovorax)の3種が有名で、体の前方についた鋭い鉤爪(フック)を最大の特徴としています。
この鉤爪で宿主の皮膚に取りつき、傷をつけて体液やリンパ液を摂取しながら生きていきます。皮膚に穴をあけて掘り進めるヒゼンダニ(疥癬)と大きく異なるのはこの点でしょう。
大きさはメスが0.6mm、オスが0.4mm程度とやや大きめで、虫眼鏡さえあれば視認することができます。
宿主の皮膚の上で出会ったツメダニのオスとメスは、そこで交尾をして産卵します。
生まれた卵はまるで蚕のように糸で被毛に付着し、3~4週間かけて3回脱皮しながら、成虫へと育っていきます。
これがツメダニの基本的なライフサイクルです。
人にも動物にも感染する人獣共通感染症の一種ですが、人間にとって幸いなことに、ツメダニは人の皮膚の上では繁殖できません。
ですから一過性の症状を引き起こしたのち、自然消滅していきます。
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刺咬症
犬の刺咬症(しこうしょう)とは、蚊やブヨなどの虫に刺された部位が炎症を起こした状態を言います。人間で言う虫刺されです。
刺された虫によっては命に関わることもあります。
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アトピー性皮膚炎
犬のアトピー性皮膚炎とは、皮膚のバリア機能が低下したり、アレルギーの原因となるアレルゲンが皮膚を通じて体内に入ることによってアレルギー反応により皮膚に症状が起こる皮膚炎です。
皮膚には「皮膚のバリア機能」と呼ばれる、体内の水分が蒸発しないよう内部にとどめておく機能、および外界の異物が体内に侵入しないよう防御する機能があります。
体内からの蒸発予防には、皮膚最上部の角質層内にある「天然保湿成分」や、皮膚内部に埋め込まれている皮脂腺から分泌される「皮脂」が重要な役割を果たします。
前者は水分を抱え込んで動けないようにする機能、後者は体外に出ていこうとする水分を角質層レベルでブロックする機能を有しています。
体外からの異物防御には、皮膚の最も外側を覆っている「角質層」が重要な役割を果たします。
健常な角質細胞の隙間は「角質細胞間脂質」と呼ばれる脂成分で埋められており、細胞同士を強固に結びつけることで外界からの異物侵入をシャットアウトしています。
アトピー性皮膚炎の一因は、何らかの理由で上記バリア機能が損なわれ、皮膚が乾燥したり異物が入り込むことで炎症が生じてしまうことです。
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アレルギー
犬の接触性アレルギーとは、特定のものに接触することによってアレルギー反応が引き起こされた状態のことです。
「アレルギー」とは、免疫反応が激しすぎて、本来守るべき生体に害を及ぼしてしまう状態のことで、アレルギーを引き起こす原因物質は「アレルゲン」と呼ばれます。
アトピー性皮膚炎では、アレルゲンとの接触から30分~1時間という比較的短い時間で症状が出てきますが、接触性アレルギーでは症状が出るまでに24時間以上かかることも少なくありません。
こうしたアレルギー反応の違いを生み出しているのが、「I型」と「IV型」というタイプの違いです。
リアクションの早い「I型アレルギー」に関してはアトピー性皮膚炎のページで解説してありますのでご参照ください。
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