犬のブドウ膜炎

ワイヤーフォックステリア

犬のブドウ膜炎~愛犬の目の瞳孔が小さくなったと思ったら~

明るく輝く犬の瞳。
それは愛犬とのコミュニケーションに欠かせない大切な要素です。
しかし、それらが突然、炎症を起こしたらどうでしょうか?愛犬の視力が危険にさらされる可能性があります。
ここでは、その一つである「ブドウ膜炎」について詳しく見ていきましょう。

ブドウ膜炎とは、眼球内部の血管を多く含む組織、つまりブドウ膜が炎症を起こす状態を指します。
犬の視力を脅かすだけでなく、不適切な管理や遅れた治療により、失明に至る恐れもあります。
この病気の症状、原因、治療法、予防法、予後について知ることは、愛犬の健康と視力を保つために必要不可欠です。

それでは、ブドウ膜炎について深掘りし、愛犬の健康を守るための知識を得ていきましょう。
ここでは、犬のブドウ膜炎の主な原因はもちろん、症状から対処法、かかりやすい犬種などをまとめていますので、是非ご参考になさって下さい。



犬のブドウ膜炎の概要

愛犬の眼球の内部には、ブドウ膜と呼ばれる血管が豊富に存在する組織があります。
このブドウ膜が炎症を起こす状態が「ブドウ膜炎」で、この病状は犬の視力を著しく損なう可能性があります。

ブドウ膜は、視線を調整したり、眼球の内部を栄養分で満たしたり、眼圧を保つために必要な水分を生成したりするなど、眼の機能を維持するために欠かせない組織です。
この組織が炎症を起こすと、視力障害を引き起こし、最悪の場合、失明に繋がる可能性もあります。

ブドウ膜炎は、自己免疫疾患、感染症、外傷、特定の薬物の副作用、遺伝など、様々な原因で発生します。
また、病状は急性と慢性の2つに大別され、それぞれ症状や治療法が異なるため、それぞれの特性を理解することが重要です。

ブドウ膜炎が疑われる場合、愛犬を早急に獣医師のもとへ連れて行き、詳しい診察を受けることが大切です。
適切な診断と早期治療が、愛犬の視力を守るための鍵となります。

犬のブドウ膜炎の主な症状

愛犬の眼を見て、「今日はいつもと何か違う」と感じたら、それは病気のサインかもしれません。
ブドウ膜炎はその一つで、犬の視力に影響を与える病気であり、その初期症状は目に見える形で現れることが多いです。

以下に、犬のブドウ膜炎の主な症状を示します。

  1. 目の充血や腫れ:
    ブドウ膜炎の最も一般的な症状で、目が赤くなったり腫れたりします。

  2. 目をこすったり、閉じたりする行動:
    これは目が痛いか不快であることを示す可能性があります。

  3. 光に対する過敏性:
    犬が強い光を避けるようになると、目の問題を示す一つのサインとなります。

  4. 異瞳(瞳孔の大きさが異なる):
    ブドウ膜炎が進行すると、瞳孔の大きさが均等でなくなることがあります。

  5. 視力の低下:
    ブドウ膜炎により、犬の視力が著しく低下することがあります。

  6. 白内障の発症:
    ブドウ膜炎が進行すると、「白内障」を発症することもあります。

  7. 角膜の濁り:
    角膜が白くなる、または透明度が低下すると、視力に影響が出る可能性があります。

  8. 涙の分泌の増加:
    目から涙が増える場合、ブドウ膜炎の症状である可能性があります。

  9. 眼圧の上昇:
    長期的に見て、眼圧の上昇は視神経へのダメージを引き起こし、視力の損失に繋がる可能性があります。

これらの症状が現れた場合は、早急に獣医師の診察を受けることをお勧めします。

犬のブドウ膜炎の主な原因

ブドウ膜炎は、一見シンプルな病状かもしれませんが、その背後には幾つもの原因が潜んでいます。これらの原因を理解することで、愛犬が健康的な目を保つ手助けとなります。

以下に、犬のブドウ膜炎の主な原因を示します。

  1. 自己免疫疾患:
    犬の免疫システムが誤って自身の体組織を攻撃し、ブドウ膜の炎症を引き起こすことがあります。

  2. 感染症:
    細菌、ウイルス、寄生虫などの微生物による感染がブドウ膜炎を引き起こすことがあります。
    ウイルスではジステンパーケンネルコフイヌヘルペス、細菌ではレプトスピラ症ブルセラ症、真菌ではクリプトコッカス、ブラストミセス、原虫ではトキソプラズマ、リケッチア、リーシュマニア、寄生虫ではハエウジ症回虫の幼虫などです。

  3. 外傷や眼の手術後:
    物理的なダメージがブドウ膜に炎症を引き起こす可能性があります。

  4. 特定の薬物の副作用:
    一部の抗生物質や抗がん剤などの薬物がブドウ膜炎を引き起こすことがあります。

  5. 他の病気
    あらかじめ保有している何らかの病気がブドウ膜炎を引き起こすことがあります。
    具体的には下記の通りです
    腫瘍
    角膜炎
    結膜炎
    水晶体の病変(脱臼・ぐらつき)
    歯周病などです。
  6. 遺伝的要素:
    一部の犬種ではブドウ膜炎の発症率が高く、これは遺伝的要素が関与している可能性があります。ドウ膜炎と皮膚の脱色を主症状とする「ブドウ膜皮膚症候群」(Canine Uveodermatologic Syndrome)に関しては、シベリアンハスキーサモエド秋田犬シェットランドシープドッグに多く発症するといわれています。
    またブドウ膜炎と水晶体への色素沈着を主症状とする「色素性ブドウ膜炎」(Pigmentary Uveitis)に関しては、ゴールデンレトリバーにおいて多く発症します。

    余りにも種特異性が強いことから「ゴールデンレトリバーブドウ膜炎」と呼ばれることもあります。

これらの原因が絡み合ってブドウ膜炎が発症することもあります。
愛犬の目の健康を維持するためには、これらの原因を理解し、適切な対策を講じることが重要です。

犬のブドウ膜炎の主な治療法

ブドウ膜炎の治療は、炎症の原因や進行度によります。
多くの場合、ブドウ膜炎の治療は複数の手段を組み合わせて行われ、犬の痛みを和らげ、視力を保つことを目指します。

  1. ステロイドと非ステロイド性抗炎症薬(NSAID):
    これらの薬は、ブドウ膜の炎症を鎮めるのに一般的に用いられます。
    それらは通常、点眼薬の形で与えられ、症状を和らげます。

  2. 免疫抑制薬:
    自己免疫性のブドウ膜炎の場合、免疫抑制薬が用いられることがあります。
    これは、体の免疫システムが過剰に反応し、ブドウ膜を攻撃していることを防ぐためです。

  3. 抗生物質と抗パラサイト薬:
    ブドウ膜炎が感染症によるものである場合、原因となる細菌や寄生虫を除去するためにこれらの薬が使われます。

  4. 眼圧を下げる薬:
    症状によっては、眼圧を下げるための薬が必要となることがあります。
    これは、特にブドウ膜炎が「緑内障」を引き起こしている場合に有効です。

  5. 基礎疾患の治療:
    別の疾病によってブドウ膜炎が引き起こされている場合は、そうした基礎疾患への治療が施されます。
    感染症が原因の場合は抗生物質、抗真菌薬、駆虫薬の投与、角膜炎結膜炎が原因の場合はまずそれらの疾患に対する管理が優先されます。
  6. 手術:
    症状が進行し、薬物治療だけでは効果がない場合、ブドウ膜を取り除く手術や、視力を回復するための白内障手術が考慮されることがあります。

これらの治療法はすべて、獣医師の診断と監督のもとに行われるべきです。
それぞれの治療は、犬の具体的な症状や全般的な健康状態によって異なる効果をもたらします。
また、あらゆる治療にはリスクも伴います。
そのため、適切な治療法を選択するためには、獣医師と密に連絡を取り合うことが大切です。

犬のブドウ膜炎の予防法

ブドウ膜炎の予防は、愛犬の眼の健康を保つための重要なステップです。
完全に予防することは難しいかもしれませんが、以下のガイドラインに従うことで、ブドウ膜炎のリスクを軽減することが可能です。

  1. 定期的な健康診断:
    愛犬の健康状態を把握し、疾患の早期発見を可能にするために、定期的な健康診断を受けることが重要です。
    これには眼科検診も含まれます。

  2. 適切な予防接種:
    感染症がブドウ膜炎の一因となる場合があるため、予防接種を定期的に受けることは重要です。

  3. 適切な目のケア:
    目の異常にすぐに気づくことができるよう、犬の目を定期的にチェックし、清潔に保つことが必要です。

  4. 健康なライフスタイル:
    適切な食事と運動は、犬の免疫システムを強くし、全般的な健康状態を維持します。
    これが、疾患の発生リスクを減らします。

  5. 遺伝的リスクの管理:
    ブドウ膜炎が特定の犬種で一般的である場合、遺伝的なリスクを理解し、適切なケアと監視を行うことが重要です。

これらの予防策は、ブドウ膜炎だけでなく他の多くの疾患から愛犬を守るのにも役立つことでしょう。
愛犬の健康を維持するために、これらのガイドラインを生活の中に組み込んでみてください。

犬のブドウ膜炎の予後

ブドウ膜炎の予後は、その原因や症状の重度、そして治療の開始時期に大きく影響されます。
一般的に言って、早期に適切な治療が行われると、予後は良好となります。
症状が軽度で、すぐに適切な治療が施される場合、視力の大部分を保つことが可能です。

しかし、症状が重度である場合や治療が遅れると、視力の完全な回復は難しくなります
最悪の場合、視力を失う恐れがあります。
また、感染性のブドウ膜炎や自己免疫性のブドウ膜炎は、繰り返し発症する可能性があります。

それぞれの犬の状態は異なり、予後も変わってきます。
あくまでも獣医師のアドバイスが重要で、定期的な検診と治療の継続が必要となるでしょう。
絶えず注意深く愛犬の健康状態を観察し、問題があると思われる場合はすぐに獣医師に相談することが、ブドウ膜炎の管理には重要となります。

まとめ

ブドウ膜炎は、犬の眼球内部のブドウ膜という部分が炎症を起こす状態です。
これは感染症や自己免疫疾患など、さまざまな原因で発生する可能性があります。

主な症状には、目の赤み、目やに、目の充血、視力低下、敏感性、瞬きの増加などがあります。
また、痛みを示す可能性もあります。

治療は、病状の原因や重症度によりますが、一般的には抗生物質や抗炎症薬、免疫抑制薬などが用いられます。
重度の炎症や合併症がある場合には手術が必要になることもあります。

予防のためには定期的な健康診断、適切な予防接種、適切な目のケア、健康なライフスタイルの維持、そして遺伝的リスクの管理が重要となります。

ブドウ膜炎の予後は、原因や症状の重度、治療の開始時期によりますが、早期に適切な治療が行われれば、視力を保つことが可能となるケースが多いです。
重度の場合や治療が遅れた場合、視力を失うリスクもあります。

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