しこりがある

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もしも愛犬の体にしこりがあったら~血管肉腫や免疫介在性関節炎などの疑いアリ~

愛犬の体にしこりを発見した際、飼い主さんは驚きや心配を感じることでしょう。
しこりはさまざまな原因で発生することがあり、無害なものから治療が必要なものまで様々です。

ここのページでは、愛犬の体にしこりができた場合に疑われる一般的な疾患や状態について詳しく説明しています。
もし愛犬にしこりを発見した場合は、獣医師の診察を受けることをおすすめします。


  • 肥満細胞腫
  • 血管肉腫
  • 歯根腫瘍
  • 唾液腺嚢腫
  • 免疫介在性関節炎

肥満細胞腫

肥満細胞腫は、犬の皮膚や下皮組織にできる良性または悪性の腫瘍の一つです。
この腫瘍は、肥満細胞というアレルギー反応に関与する細胞から発生します。

肥満細胞腫には、皮膚にできるものと内臓に出来るものがありますが、犬においてはほとんどが皮膚型です。
好発年齢は8.5~9.5歳で、多くの場合、硬くて境界線がはっきりしたできものが皮膚上にぽつんとイボや脂肪の塊のように現れます。好発部位は胴体や股間で、割合は約50%。それに四肢の40%、頭頚部の10%が続きます。
腫瘍を見た目から悪性かどうかを判断するのは難しく、虫刺されに間違われることもしばしばです
また大きくなったり小さくなったりすることも多く、小さくなったからといって安心はできません。
数ヶ月間何ら変化を見せず、急に大きくなることもあります。
転移性は高く、7~8割において近くのリンパ節に転移が見られます。

肥満細胞は、内部に保有する顆粒の中に、生物活性物質をたくさん溜めこんでいます。
具体的には、ヒスタミン、ヘパリン、コンドロイチン硫酸、血小板活性化因子、腫瘍壊死因子、プロスタグランジン、ロイコトリエンなどです。
この中でも特に生体への影響が大きいのはヒスタミンです。この物質は「血圧降下」、「平滑筋収縮」、「血管透過性亢進」といった重要な働きを担っていますが、でたらめに放出されてしまうと、体の至る所にあるレセプター(受容体)と結合して多種多様な症状を引き起こします。
症状のほとんどは、肥満細胞腫から無規律に放出されるヒスタミンが主犯になっていることから、「ヒスタミン誘発性腫瘍随伴症候群」と呼ばれることもあります。

犬の体に突然のしこりや腫れが出現した場合、肥満細胞腫の可能性が考えられます。
しこりの大きさ、形、硬さは様々で、時折、急速に大きくなることもあります。
この腫瘍は触れるとピンクから赤紫色を帯びることがあります。

早期発見と治療が重要です。
特に大きくなったり、変化が見られる場合は、速やかに獣医師の診察を受けることをおすすめします。

治療法や症状の詳細はこちら

血管肉腫

血管肉腫は犬における悪性の腫瘍の一つで、血管の内皮細胞から発生します。
つまり、血管のガンです。
血管を断面にすると、外側から「外膜」、「中膜」、「内膜」という構造になっており、一番内側の層は「血管内皮細胞」という細胞によって埋め尽くされています。
血管肉腫とは、この血管内皮細胞がガン細胞になってしまった状態のことです。
血管肉腫は血管の存在している場所ならどこにでも発症する可能性を持っていますが、犬における好発部位は皮膚、心臓、脾臓、骨などです。
また他の動物よりも発症率が高く、全腫瘍中の2%を占めるとも言われています。

しこりや腫れとして体の任意の部位に現れることがありますが、しばしば皮膚や下皮組織に発生します。この腫瘍は非常に攻撃的で、急速に成長し、他の臓器に転移するリスクがあります。

早期の診断と治療が非常に重要です。犬の体に新たなしこりや変化を感じた場合、すぐに獣医師の診察を受けることを強く推奨します。

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歯根腫瘍

歯根腫瘍は、犬の口腔内に発生する良性の腫瘍で、歯の根の部分の歯周組織から生じます。
歯の根元に当たる「歯根部」(しこんぶ)に炎症が生じ、局所的に膿が溜まってしまった状態のことです。
歯根の先端のことを根尖(こんせん)というので、歯根膿瘍は根尖膿瘍、根尖周囲膿瘍とも呼ばれます。
犬の歯は、表に出ている「歯冠部」(しかんぶ)と歯茎の中に埋まっている「歯根部」とから成り立っています。
 通常であれば、最外層にある硬いエナメル質が保護しているため、歯根部に炎症が生じる事はありません。
 しかし歯に大きな力が加わってヒビが入ったり折れてしまったりすると、そこから病原菌が入り込み、一番奥にある歯根部で炎症を引き起こしてしまうことがあります。
このようにして歯の根元に膿がたまった状態が「歯根膿瘍」です。

この腫瘍は、歯茎や顎の骨の腫れやしこりとして現れることが一般的です。
時には痛みや歯の動揺、歯肉出血も伴うことがあります。

早期の発見と治療が必要です。犬の口腔内で変化やしこりを発見した場合は、獣医師に相談し、適切な診断と治療を受けることを推奨します。

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唾液腺嚢腫

唾液腺嚢腫は、犬の唾液腺が正常に唾液を排出しないために拡張したもので、これがしこりや腫れとして体に現れることがあります。

唾液腺粘液瘤、唾液腺嚢胞と呼ばれることもあります。
「腫瘍」が細胞の増殖によってできた塊を意味しているのに対し、「嚢腫」は細胞以外の成分を細胞成分が包み込むことで袋を形成した状態を意味しています。

犬の唾液は、「耳下腺」(じかせん)、「顎下腺」(がっかせん)、「舌下腺」(ぜっかせん)、「頬骨腺」(きょうこつせん)という大きい唾液腺と、軟口蓋、唇、舌、頬に散在している小さい唾液腺との共同作業によって作り出されています。
腺内で作り出された唾液は、専用の管を通って口の中に放出されますが、この管のどこかに障害があると、途中で唾液が漏れて水たまりを作ってしまいます。
このようにして発生するのが「唾液腺嚢腫」です。漏れ出した唾液の周囲は、炎症の結果として生じた肉芽組織で覆われ、ちょうど膨らんだ水風船のような状態になります。

しこりは通常、耳の下や首の側面に発生します。これは唾液が嚢腫内に貯まることで生じるもので、その結果、痛みや炎症を引き起こすことがあります。

この症状を発見した場合は、早期に獣医師の診察を受けることが重要です。
獣医師は、嚢腫の吸引や手術を勧めることがあります。

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免疫介在性関節炎

免疫介在性関節炎は、犬の自己免疫システムが誤って関節組織を攻撃することで生じる疾患です。
これにより、関節の炎症や腫れ、そして痛みが生じることがあります。

犬の体にしこりが出現する場合、免疫介在性関節炎は必ずしも主な原因ではありませんが、関節の周囲に腫れや炎症が発生することで、しこりのような変化を感じることがあります。

この疾患の特徴として、複数の関節が同時に影響を受けることが一般的です。
また、関節が赤くなる、温かく感じる、動きが困難になるなどの症状が伴います。

免疫介在性関節炎を疑う場合や犬が通常の行動から変わった様子を示している場合は、速やかに獣医師の診察を受けることが推奨されます。

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まとめ

愛犬の体にしこりや腫れが出現した場合、様々な原因や疾患が考えられます。以下はその中で疑われる主な疾患のまとめです:

  1. 肥満細胞腫:良性から悪性までの範囲を持つ腫瘍で、特に肥満細胞から成る。皮膚の表面や下で成長することが多い。
  2. 血管肉腫:悪性の腫瘍で、血管の細胞から成る。急速に成長し、他の部位への転移のリスクがある。
  3. 歯根腫瘍:主に犬の上顎や下顎の歯の根の部分に発生する腫瘍。しこりや腫れだけでなく、口臭や食事の際の痛みの症状があることも。
  4. 唾液腺嚢腫:唾液腺が正常に排泄されず、腺内に貯まった唾液によって形成される袋状の腫瘍。
  5. 免疫介在性関節炎:自己免疫システムが関節組織を攻撃することで生じる疾患。関節の周囲の腫れや炎症がしこりとして感じられることがある。

これらの疾患の中には、緊急性を伴うものもあるため、愛犬の体に異常を感じた場合は、速やかに獣医師の診察を受けることが重要です。