犬の脊椎疾患(脊柱変形)~愛犬が知覚過敏と感じたら~
背骨を構成している椎骨(ついこつ)の一部が正常に形成されていない状態のことです。
いくつかのパターンがあり、具体的には以下の通りです。
犬の脊椎奇形(せきついきけい)
- 「半椎」(はんつい, hemivertebra)
椎骨がほとんど形成されていないもの。
骨の塊が背骨と背骨の間に石ころのように挟まった状態を作る。 - 「楔状椎」(けつじょうつい, wedge shaped vertebra)
椎骨は形成されているものの正常な円柱型になっておらず、横から見ると楔(くさび)型になっているもの。 - 「移行椎」(いこうつい, transitional vertebra)
腰椎と仙椎の移行部において形成される、両者の特性を備えた中途半端なもの。 - 「癒合椎」(ゆごうつい, block vertebra)
椎骨が正常に分離せず結合した状態のもの。 - 「蝶形椎」(ちょうけいつい, butterfly vertebra)
椎骨の椎体部分が形成不全で途切れ、蝶々の羽のように両側に広がって見えるもの。 - 「短椎」(たんつい, short vertebra)
椎骨の椎体部分が対称性に形成不全を起こし、丈が短くなっているもの。 - 「仙尾骨形成不全」(sacrococcygeal dysgenesis)
脊柱の末端に位置する仙骨や尾骨が正常に形成されていないもの。 - 「二分脊椎」(spina bifida)
椎骨の後ろ側が正常に結合せず隙間が開いてるもの。 - 「脊椎管狭窄」(spinal stenosis)
脊髄を通す管が狭くなっている状態のこと。
特に「半椎」は、上下に位置する骨の並べ方をゆがめることにより、正常な背骨のラインを大きく変えてしまうことがあります。
具体的には以の通りです。
犬の脊椎変形(せきついへんけい)
- 「脊柱前弯 」(lordosis)
腰椎部分が下方にくぼんでいること。
人間で言うと腰をそらせた状態。 - 「脊柱後弯」(kyphosis)
胸椎部分が上方に盛り上がっていること。
人間で言うとせむし状態。 - 「脊柱側弯」(scoliosis)
背骨の一部が横に曲がっていること。
胸椎でも腰椎でも起こりうる。
脊柱の変形は肉眼でも捉えることが出来ますが、脊椎の奇形はエックス線、ミエログラフィー、CTスキャン、MRIといった検査をしなければ確認することができません。
犬が何の症状も示していない場合は、全く別の理由で病院を訪れて画像診断をしたところ、たまたま脊椎の奇形が見つかったというケースもしばしば起こります。
犬において神経症状を引き起こすのは脊柱前弯症や脊柱側弯症よりも、脊柱後弯症だとされています。
神経症状が現れるのは、脊柱後弯によって変形を受ける脊髄の胸~腰椎領域(T3~L3)と、それに神経支配されている筋肉や皮膚感覚です。
症状の度合いは後弯がひどくなればなるほど強まります。
ここでは、犬の脊椎奇形(脊柱変形)の主な原因はもちろん、症状から対処法などをまとめていますので、是非ご参考になさって下さい。
犬の脊椎奇形の主な症状
知覚過敏、疼痛が最も多い症状です。
主な症状 |
☆後足の運動失調 |
☆感覚の麻痺 |
☆知覚過敏 |
遺伝性の椎骨変形は若年性の椎間板変性や関節の不安定性を引き起こしやすいと考えられているため、結果として椎間板ヘルニアや変形性関節症になる可能性があります。
犬の脊椎奇形の主な原因
- 妊娠中の母体に毒物、ストレス、栄養不足といった環境要因が加わると、胎子の正常な発育が阻害され、脊椎奇形や脊柱変形につながる可能性があります。
- 人医学の分野では、胎生期に母体が低酸素に陥ると脊椎奇形を発症する割合が高くなるといいます。
母犬が呼吸困難を来たす病気にかかっていたり、短頭種で気管に問題がある場合は、子犬を身ごもっている間に酸素不足に陥る危険性があります。
脊椎奇形の好発品種に短頭種が多いという事実が、この仮説を裏付けています。
犬の脊椎奇形の主な治療法
未だに治療は確立されていませんが、基本的には保存治療と外科治療に分けられます。
- 経過観察
2016年にグラスゴー大学が行った調査により、脊柱後弯症のコブ角が35度を超える場合、75%の確率で神経症状を発症するという目安が示されました。
犬のレントゲン写真を見てこの角度未満である場合は、とりわけ医療的介入を行わず現状維持が推奨されます。
定期的に通院してコブ角を計測しておくことは、進行の度合いを把握する上で有用です。 - 脊柱固定
代表的な治療法は脊柱固定です。
しかし早期に関節固定を行うことでどの程度症状の進行を妨害できるかとか、どの程度症状を軽減できるかといった報告はあまり行われておらず、予後を示すことが困難です。 - 安楽死
犬の神経症状がひどく、生活レベルが著しく低下していると判断された場合は安楽死が選択されることもあります。
病気に負けずに頑張ることも重要ですが、本当に犬にとって、幸せなのかどうかを冷静に判断する必要があるでしょう。
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