犬の肝硬変(かんこうへん)

犬の肝硬変~愛犬が元気がなく、食欲が落ちてきたら~

肝臓は犬の体内で最も重要な器官のひとつであり、解毒作用や栄養素の代謝、エネルギー生成など、数多くの機能を担っています。
しかし、時にはこの重要な臓器が病気に見舞われることがあります

犬の肝硬変(かんこうへん)とは、肝臓の健康を大きく損ねる疾患のひとつで、正常な肝細胞が繰り返し炎症と回復を経ることで徐々に線維化し、硬くなってしまった状態です。
つまり、肝硬変は病気の名称ではなく、さまざまな原因によって肝臓が長い間ダメージを受け続けた結果、肝臓の機能を失ってしまう状態です。
肝臓内で繰り返し炎症が起こると、集まってきた免疫細胞によって線維芽細胞(せんいがさいぼう)が刺激され、コラーゲン線維を始めとする各種のタンパク質が生成されます。
このようにして、細胞外の線維部分(細胞外基質)が必要以上に増えてしまった状態が「肝線維症」(かんせんいしょう)です。
肝硬変とは、この肝線維症が長期化し、肝臓全体の構造が変わってしまった末期的な状態だとも言えます。

肝臓は解毒、ビタミンやホルモンの生成、炭水化物、脂質、タンパク質の合成や分解、消化酵素の生成など数百の役割を担っています。
一度変性してしまった肝臓は、治療によって悪化を食い止めたり、進行を遅らせたりすることは可能ですが、もはや元に戻すことはできません。

ここでは、犬の肝硬変(かんこうへん)の主な原因はもちろん、症状から対処法などをまとめていますので、是非ご参考になさって下さい。



犬の肝硬変の主な症状

肝硬変の主な初期症状は、「食欲不振」、「疲れやすい」、「体重減少」などですが、これらを一般的によく見られる症状であり、特に目立った症状が現れにくい病気です。
つまり、肝硬変の特徴的な症状である黄疸、腹水の貯留とが表れ始めた頃には、もうかなり肝硬変が進行していることが多いです。

犬の肝硬変の主な症状は以下の通りです。

  1. 無気力:
    犬がいつもより元気がなく、遊びや散歩に対する興味喪失が見られることがあります。
  2. 食欲不振:
    食事に対する興味が薄れ、体重減少が起こることがあります。

  3. 嘔吐、下痢:
    消化不良により、嘔吐や下痢が続くことがあります。

  4. 腹水:
    肝臓の機能が低下すると、腹部に水分が溜まり、腹部が膨らむことがあります。

  5. 黄疸:
    肝臓の解毒機能が低下すると、皮膚や目の白い部分が黄色く変色することがあります。

  6. 出血傾向:
    肝臓の凝固因子の生成が低下し、出血しやすくなることがあります。

  7. 肝性脳症:
    肝性脳症」とは、肝臓の疾患によって引き起こされる神経学的障害です。
    肝臓が正常に機能しなくなると、アンモニアや毒素の除去がうまくいかず、これらの物質が血液中に蓄積されます。この結果、毒素が脳に影響を与え、神経細胞の働きが低下し、脳の機能に異常が生じます。

    肝性脳症の主な症状は、意識の変化(錯乱や昏睡)、行動の異常、運動障害(歩行困難やふらつき)、けいれんなどです。

これらの症状がある場合、獣医師の診察を受けることが重要です。
肝硬変は進行が早い場合もあるため、早期発見と治療が犬の健康にとって重要です。

<h2

>犬の肝硬変の主な原因

犬の肝硬変は、さまざまな原因で引き起こされる肝臓の慢性的な疾患です。

そもそっも肝臓は再生力の強い臓器といわれており、多少のダメージであれば、再生することが出来ます。
しかし、長期間強いダメージを受け続けると再生が追いつかなくなり、肝臓の機能はどんどん落ちていきます。
肝臓の炎症や損傷が繰り返されることで、正常な肝細胞が線維化し、硬くなります。
これにより、肝臓の機能が低下し、徐々に問題が生じます。

以下は、肝硬変の主な原因です。

  1. 感染症:
    ウイルス性肝炎や細菌感染が肝臓に炎症を引き起こすことがあります。

  2. 自己免疫性疾患:
    犬の免疫システムが誤って自分の肝臓を攻撃することがあります。

  3. 遺伝的要因:
    遺伝的な異常や先天性の肝臓疾患が原因で肝硬変が発症することがあります。

  4. 代謝異常:
    銅貯蔵症や「アイリッシュ・ウルフハウンド」のような犬種に特有の代謝異常が肝臓に影響を与えます。

  5. 毒物:
    薬物や化学物質、食品中の毒素(例えば、アフラトキシン)が肝臓に損傷を与えることがあります。

  6. 肝炎:
    慢性肝炎急性肝炎によって繰り返し肝臓に炎症が起こると、そのたびに線維組織が増殖して破壊された部分を修復しようとします。
    最終的には組織を保護するはずの線維が多くなりすぎ、肝臓全体を硬く変質させてしまいます。
  7. 肝臓の血流異常:
    肝臓への血流が不十分であったり、門脈血栓症などの血管異常が肝硬変の原因となることがあります。

肝硬変は進行性の病気で、症状が出る前に発見することが難しい場合もあります。早期発見と適切な治療が重要ですので、定期的な健康チェックや獣医師との相談が大切です。

>犬の肝硬変の主な治療法

犬の肝硬変の治療は、原因や病状によって異なります。肝硬変自体は進行性の病気であり、一度損傷した肝臓の細胞は回復しづらいため、主に症状の緩和や進行の遅延が目的となります。
以下は、犬の肝硬変の主な治療法です。

  1. 原因に対する治療:
    肝硬変の原因が特定できる場合、その原因に対する治療が重要です。
    例えば、感染症の場合は抗生物質や抗ウイルス薬、自己免疫性疾患の場合は免疫抑制剤などが用いられます。

  2. 食事療法:
    肝臓機能を回復させるためには、十分な栄養が必要ですが、タンパク質を大量に与えると、肝臓に負担をかけてしまうことがあります。
    肝臓に負担をかけない低タンパク質、高エネルギーで栄養バランスの良い食事が重要です。
    獣医師が推奨する療法食を与えることで、肝臓の機能をサポートし、症状を緩和させることができます。

  3. 薬物療法:
    肝臓の機能をサポートする薬剤や、症状を緩和する薬剤が使用されます。
    例えば、肝臓の解毒機能をサポートするアデノシルメチオニン(SAMe)や、炎症を抑制するステロイド、アンモニアの除去を助けるラクツロースなどが処方されることがあります。

  4. 肝臓サポートサプリメント:
    肝臓の機能をサポートするサプリメント(ミルクシスルなど)が役立つ場合があります。
    ただし、獣医師と相談してから使用することが重要です。

  5. 腹水への対処:
    おなかに水が溜まって苦しそうな場合は、まず利尿剤が投与され、それでも改善しない場合はおなかの中に注射針を刺して水を吸い取ります(腹水穿刺)。

犬の肝硬変の治療は、早期発見と適切な治療が重要です。
症状が現れた場合や、定期的な健康チェックで異常が見つかった場合は、速やかに獣医師と相談し、適切な治療を開始してください。

犬の肝硬変の予後

犬の肝硬変の予後は、病気の進行度や原因、適切な治療が行われるかどうかによって大きく変わります。
肝硬変は肝臓組織が繰り返し損傷され、その結果、正常な肝臓細胞が瘢痕組織に置き換わってしまう病気です。
これにより肝臓の機能が低下し、重篤な症状が現れることがあります。

早期に発見され、適切な治療が行われる場合、予後は比較的良好となることがあります。
症状の緩和や進行の遅延が可能で、犬の生活の質を維持(QOL)することができます。

ただし、肝硬変が進行して肝臓の機能が著しく低下した場合、予後は不良となることがあります。
肝臓が正常に機能しなくなると、体内の毒素が除去できず、肝性脳症や内臓出血、腹水などの重篤な症状が現れ、命に関わることもあります。

肝硬変の予後を良くするためには、早期発見と適切な治療が重要です。
定期的な健康チェックや、症状が現れた場合の速やかな獣医師への相談が大切です。
また、予防策として、適切な食事や適度な運動、予防接種などで犬の健康を維持し、肝臓への負担を軽減することが大切です。

まとめ

犬の肝硬変は、肝臓が痛んで、働かなくなる病気です。主な症状は、食欲がなくなったり、痩せたり、黄色くなったり、お腹に水がたまったり、弱くなったり、変な行動をしたりすることです。

原因はいろいろあり、ウイルス感染、毒物、薬、遺伝などが関係しています。

治療は、原因に合わせて薬を使ったり、食事を変えたりします。

予後は、病気の進行具合や、早く治療を始めるかどうかによって変わります。早く見つけて治療を始めることが大切です。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

CAPTCHA