犬の急性腎不全~急に尿の量が減ったり、出なくなったりしたら~
犬の急性腎不全(きゅうせいじんふぜん)とは、腎臓が突然機能不全に陥り、体にとって有害な物質を体外に排出できなくなった状態を言います。
慢性腎不全では数ヶ月~数年かけて徐々に腎臓の機能が低下していきますが、急性腎不全の場合はたった1日で急激に悪化します。
多くの場合、何の前触れもなく突然出現します。
ここでは、犬の急性腎不全の主な原因はもちろん、症状から対処法などをまとめていますので、是非ご参考になさってください。
- 犬の急性腎不全の主な症状
- 犬の急性腎不全の主な原因
- 犬の急性腎不全の主な治療法
犬の急性腎不全の主な症状
犬の急性腎不全の主な症状は、食欲がなくなり、嘔吐を何度も繰り返すなどの他の疾患でもみられるものなので、なかなか気付きにくいです。
症状が進行していくと、尿の量が減ったり、出なくなったりします。
主な症状 |
☆食欲不振 |
☆嘔吐 |
☆下痢 |
☆高窒素血症 |
☆尿毒症 |
☆代謝性アシドーシス |
犬の急性腎不全の主な原因
犬の急性腎不全の主な原因は腎臓にとって毒性のある中毒性物質によるものと、腎臓への血流の著しい低下によるものです。
- 腎臓の障害
腎臓自体が障害されたために起こる急性腎不全で、「腎性急性腎不全」とも呼ばれます。
具体的には急性糸球体腎炎、ネフローゼ症候群、レプトスピラ症のほか、薬物、毒物、閉塞などです。 - 血流の悪化
腎臓自体は正常であるにもかかわらず、腎臓に流れ込む血流が悪化したために生じた急性腎不全で、「腎前性急性腎不全」とも呼ばれます。
具体的には出血、大量の下痢、脱水、ショック、心不全、血管収縮薬や拡張薬の過剰な投与、長時間の麻酔、熱中症などです。 - 排尿障害
腎臓でつくられた尿を体外へ排泄するための経路が閉塞したために発症する急性腎不全で、「腎後性急性腎不全」とも呼ばれます。
具体的には尿管、膀胱、尿道の炎症や閉塞などです。 - 毒性の摂取
確実に予防が可能なのは「腎毒性物質」と呼ばれるものです。
これは腎臓に作用して毒性を発揮し、機能不全に陥れるもの全般を指します。
具体的には抗生物質、化学療法薬(抗がん剤)、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、造影剤、重金属、昆虫やヘビなどによる生物毒、ブドウ、ユリ科植物などいろいろです。 - エチレングリコールによる急性中毒
腎毒性物質の中でも報告例が多いのはエチレングリコールによる急性中毒です。
エチレングリコールは緑色の液状物質で、不凍液の原料として広く使用されています。
誤って飲み込んでしまうと、消化管から急速に吸収されて肝臓に移り、グリコアルデヒド、グリコール酸、グリオキシル酸、シュウ酸といった物質に分解されます。
このようにして体内にできた腎毒性物質は代謝性アシドーシスを引き起こすほか、腎尿細管上皮細胞を破壊して急性腎不全を招きます。
中毒の中で最も致死率が高く、犬における致死量は6.6ml/kg程度です。
治療しなかった場合、36~72時間で腎不全を起こして尿の量が減り、72~96時間で完全に無尿となります。
犬では8時間以内に治療すれば予後良好ですが、それより遅れてしまうと致命的な後遺症が残ってしまうこともあります。
特に冬場は安易に道路わきにまき散らさないなどの配慮が必要となります。
犬の急性腎不全の主な治療法
犬の急性腎不全の治療は、基本的には入院して集中的に治療します。
治療は輸液療法が中心となり、嘔吐などの症状を緩和する治療も行われます。
急性腎不全では、体内の水分が適度に満たされている状態を維持することが非常に大切です。
- 対症療法
まずは症状の軽減を目的とした治療が施されます。
たとえば高窒素血症の改善を目的に、輸液、ホルモン剤投与、腹膜灌流(ふくまくかんりゅう=腹の中に灌流液を入れて1時間位してから回収する)、血液透析(腎臓を模した機械に血液を流す)、窒素化合物を吸着させる薬剤の投与などの治療が施されます。 - 栄養補給
吐き気が治まったタイミングで炭水化物や脂肪など、タンパク質以外の栄養素を補給します。
吐き気が続いている場合は静脈カテーテルを用いて非経口的にエネルギーを送り込みます。 - 基礎疾患の治療
別の疾病によって急性腎不全が引き起こされている場合は、それらの基礎疾患への治療が合わせて施されます。
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